Chapter 460
彼女こそ正式な九条夫人
皆の反応を眺めながら、彼は心の中で小さく鼻を鳴らした。
その視線は、意図しているのかいないのか、高橋美咲の方にも流れた。彼女の表情はひどく落ち着いており、何が起きようとしているのかまるで知らないように、ただ考え込む様子を見せていた。
九条会長は心の中で冷笑した。あの女をここへ招いたのが間違いだったと、九条絵美里に思い知らせてやる!
会場の囁きはしばらく続き、ようやく静まった。
皆の興奮が少し落ち着いたところで、明おじさんは続けた。「皆様、蓮様のご縁について、さぞ気になっておられることでしょう。九条家を代表し、ここに皆様へ発表いたします……」
佐伯葉月の唇に得意げな笑みが浮かんだ。彼女は勝者であるかのような尊大な目で、高橋美咲を蔑むように見渡した。
もうすぐ、高橋美咲はどれほど打ちのめされるだろう。
こっそり入り込めたから何だというの?
結局、九条蓮は自分の男で、高橋美咲などただの道化にすぎない!
皆が固唾をのんで待つ中、明おじさんは深く息を吸い、大きな声で発表した。「蓮様は、すでに独身ではございません!」
その言葉が落ちた瞬間、会場はまず水を打ったように静まり返った。次いで驚きの声が爆発し、人々が身を寄せて囁き合う大きなざわめきへと変わった。
九条蓮には、もう相手がいる?
どうして今まで、何の噂も耳に入らなかったのだろう?
何しろ東京と大阪は離れており、九条蓮自身も意図的に情報を伏せていた。大阪まで噂が届くはずもない。そのため、この知らせを聞いた誰もがひどく驚いた。
明おじさんの言葉を聞いて、高橋美咲はようやく、先ほど九条蓮が口にしていた大事なことがこれだったのだと気づいた。
つまり九条社長は、恋人がいることを公に発表し、その恋人を驚かせようとしているのだろうか?
九条社長の恋人である柳小路について、高橋美咲は多くを語るつもりはなかった。ただ、二人の幸せを願うだけだ。
これからは柳小路と距離を置かなければならないようだ。
高橋美咲の顔に疑いの色がまったくないのを見て、九条蓮は喉元までせり上がっていた心臓が、ようやくゆっくりと下りていくのを感じた。
その時、仕立てのよいスーツを着た水城圭介が奥から歩み出て、ただ傍らに立った。その表情からは何も読み取れなかった。
水城圭介を見た高橋美咲は、彼こそ九条社長なのだという思いをいっそう強くし、先ほど九条蓮を誤解したことに後ろめたさを覚えた。
明おじさんの言葉を聞いた九条会長は、逆に眉をきつく寄せた。表情は暗く険しくなり、顔は長く伸びていた。
なぜか、何かがおかしい気がする。
九条家と佐伯家の縁組を発表するなら、こんな言い方にはならないはずだ。明はいったい何を言おうとしている?
その時、誰かが大胆にも尋ねた。「九条蓮さんがお付き合いしているのは、どちらのお嬢様なのでしょうか?」
周囲の人々も耳をそばだて、明おじさんの答えを待った。
皆の好奇心に満ちた視線を受け、明おじさんは微笑んだ。
彼は九条会長の方へ、さりげなくも意味ありげに目をやった。その瞳には、ほんのわずかな後ろめたさが浮かんでいた。
明おじさんは厳粛な表情で続けた。「蓮様とそのお嬢様は、まだご関係を育んでいる最中でございます。余計なことを明かして、お二人のお気持ちに影響を与えるわけにはまいりません。ですが今後、九条家からよいご報告ができる時が来ましたら、皆様をご招待いたします。どうか気長にお待ちください」
皆の顔に落胆が浮かんだ。つい先ほどまで、いったいどの家が九条蓮を射止めたのか聞けるものと待ち構えていた者もいた。
可能なら、この機会にその家へ取り入ろうと考えていた者さえいた。
まさか、何の答えも明かされないとは。
九条会長はここに至って、ようやく何が問題だったのかを完全に理解した!
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