Chapter 453
一族の籍から追放された
「そういえば、彼女をここへ連れてきて、黒川家の人間だと盛んに持ち上げていたのは佐伯葉月じゃなかった? 一族の籍から追放された人と姉妹同然に親しいなんて、いろいろ考えさせられるわね」
……
ひそひそと交わされる声が絶えず耳に入り、佐伯葉月はその場で凍りついていた。
黒川翠がそんな境遇にあったとは、夢にも思わなかった。すでに一族の籍から追放されていたというのか?
では、黒川翠が自分に約束したことは……。
佐伯葉月はようやく、自分も黒川翠に騙されていたのだと悟った!
確かに彼女はかつて黒川家の一員だった。だが、病気を治す力などまったくない。しかも黒川善を招いたのは黒川翠ではなく、高橋美咲だったのだ!
先ほど皆の前で徹底的に恥をさらしたことを思うと、佐伯葉月は全身の血が凍りついたように感じた。
脇に垂らした手の爪が強く掌へ食い込み、顔に浮かんだ歪んだ表情を隠すこともできなかった。
父親の佐伯大輔も、娘がこれほどの醜態をさらせば当然面目を失う。まして彼自身も先ほど、尊大な言葉をいくつか口にしていた。
それでも、目の前の状況は何とか取り繕わなければならない。
どれほど屈辱的でも、歯を食いしばって飲み込むしかなかった。
佐伯大輔は厚かましくも無理に笑顔を作り、年長者らしい口調で佐伯葉月を叱った。「葉月! その黒川翠という女に騙されたのか? お前はまだ経験が浅く、人の善し悪しを見抜けないんだ。これからはもっと気をつけなさい。危うく九条会長まで巻き込むところだったぞ!」
佐伯葉月は気まずそうにうなずき、小さな声で返事をするしかなかった。
九条会長の表情も暗くなった。これほど大きな茶番になるとは思ってもみなかったのだ。
では先ほど、佐伯葉月が連れてきた医者には診てもらうが、高橋美咲の医者には診てもらわないと言った自分まで、道化を演じたことになるではないか。
そう考えると、不愉快そうに顔をしかめた。明らかに機嫌を損ねていたが、追及できることもなく、腹いっぱいの怒りをむなしく飲み込むしかなかった。
佐伯大輔と佐伯葉月に、これ以上人目を引く勇気などあるはずもない。二人は目立たないように、そそくさと脇へ退いた。
九条家の大奥様は、高橋美咲が探した医者が黒川善だったとは思わず、すぐに笑顔になった。
九条会長へ何度も言った。「美咲が探した先生は立派な人だって言ったでしょう。それなのに、あなたはどうしても私に言い返すんだから。佐伯さんが連れてきたのは偽物だったのよ。騙されなくてよかったわ。でなければ体を壊して、得るものより失うものの方が大きくなるところだったわよ」
九条会長は唇を固く結び、何も言わなかった。
高橋美咲が注目を浴びるのは、本当に気に入らない。だが高橋美咲は一体、どうやって黒川善と知り合ったのだ?
それに、なぜ黒川善はあれほど彼女の機嫌を取ろうとしている?
九条会長は目を細め、探るような視線を高橋美咲と黒川善へ走らせた。
まさか二人には、人に言えない秘密でもあるのか?
高橋美咲は驚いて黒川善を見て、信じられない様子で尋ねた。「黒川善、あなた……本当に佐伯葉月に呼ばれたんじゃないの?」
「当たり前だろ!俺はあの女なんて全然知らない!」黒川善は仕方なさそうに言った。「君が誕生日宴に来ると聞いたから、様子を見に来たかっただけだ」
「えっと……」高橋美咲は、たちまち何と言えばいいのか分からなくなった。
どうやら黒川善を誤解していたらしい。
周囲の人々は二人の会話を聞き、小声でささやき合った。
「黒川家の当主は、あの女とずいぶん親しいみたいね。あんなに忙しいのに、わざわざ時間を作って来たなんて」
「もしかして、黒川家の当主が彼女に求婚しているの?」
「ありえない話じゃないわ。あんなにきれいな子だもの。誰だって好きになるでしょう?一体どんな身分なのかしら?」
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