Chapter 441
奥さん、逃げそうです(続き)
もし後で九条家が佐伯葉月を正式な孫嫁候補として発表すれば、親友の自分はさらに注目されるはずだ。黒川家を追い出されたって、華やかに生きていける!
そう思うと、黒川翠の目が動き、佐伯葉月を見てわざと尋ねた。「葉月、今日九条家があなたのことを発表するの?」
その言葉が落ちると、周囲から驚きの声が上がった。
九条家が発表?佐伯葉月は九条家と何か関係があるのか?
一瞬、周囲の令嬢たちは皆、憶測を始めた。
今日は九条家の大奥様の誕生日パーティーと言われているが、多くの人が九条家に取り入るために来ている。九条蓮は将来の当主として、特に多くの女性たちの憧れの的だ。
今の黒川翠の発言は、当然大きな注目を集めた。
佐伯葉月は黒川翠の言葉を聞いて、少し恥ずかしそうに控えめに答えた。「たぶんそうだと思う。九条さんが今日発表すると言っていたから。」
その言葉に、皆の好奇心はさらに高まった。
九条家には多くの未婚の男性がいる。佐伯葉月がどの御曹司と関係があるのか、誰にも分からない。
誰かが興味津々に尋ねた。「葉月、九条家のどの御曹司と付き合っているの?」
佐伯葉月は質問してきた令嬢を見つめ、瞬きをしてから意味ありげに微笑んだ。「どうかしら……当ててみて?」
「えー、そんなの当てられるわけないじゃない!」
「そうよ!九条家には人が多すぎるもの。無理よ!」
令嬢たちはそう言いながらも、無意識のうちに誰なのか推理し始めていた。
九条家の分家筋から本家の若様まで、思いつく限りの名前を挙げていったが、佐伯葉月はただ微笑みながら首を横に振るばかり。誰一人として、彼女の縁談相手ではなかった。
誰も九条蓮の名前は挙げなかった。彼の地位や立場を考えれば、普通の人間が手の届く相手ではないからだ。
最後に答えを明かしたのは、黒川翠だった。
彼女は微笑みながら言った。「葉月、もうからかわないであげて。」
少し間を置いて、黒川翠は誇らしげに発表した。「実は葉月のお相手は、九条蓮なの!」
「えっ!九条蓮なの!?」
何人かの令嬢たちは信じられないというように口元を押さえ、佐伯葉月を驚きの目で見つめた。
まさか彼女が九条蓮と縁談が決まっているとは思いもしなかった。想像を遥かに超えている。つまり、佐伯葉月はすでに九条家の大旦那様から将来の孫嫁に指名されているということなのか?
今も九条家の実権は大旦那様が握っている。もし佐伯葉月が選ばれたのなら、もう既成事実なのだろう。
一瞬にして、華やかなドレスを纏った令嬢たちの顔に落胆の色が浮かんだ。
彼女たちは、もしかしたら自分にもチャンスがあるかもしれないと期待していた。もし九条蓮に気に入られれば、誰もが羨む九条夫人になれるかもしれないと。まさかその座がとっくに決まっていたなんて。
令嬢たちの表情の変化を見て、佐伯葉月は満足げに微笑みを浮かべた。
黒川翠は佐伯葉月を見て、からかうように笑った。「九条夫人、あんまりみんなを羨ましがらせないで。誰だって九条蓮の隣に立ちたいのに、成功したのは葉月だけなんだから。」
「翠!変なこと言わないでよ!」佐伯葉月は恥ずかしそうに顔を赤らめた。口ではたしなめているが、実際は全く止める気はなかった。
その時、玄関付近がふっと静まり、すぐに小声のざわめきが広がった。
高橋美咲と九条凛が、すでにイブニングドレスに着替えて優雅に現れたのだ。
ライトの下で、高橋美咲の完璧で繊細な顔立ちは息を呑むほど美しかった。
もともと美人だったが、プロの手で念入りに仕上げられた今、その存在感は圧倒的だった。
星のように輝く瞳、白磁のように透き通った肌、体にぴったりと沿うドレスが歩くたびに美しい曲線を描く。高橋美咲はまるで天から舞い降りた妖精のようで、誰もが目を離せなかった。
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