Chapter 434
疑念の種を植えて(続き)
この時、高橋美咲はもう自信が持てなくなっていた。
考えれば考えるほど不安になり、特に黒川善が言っていた「九条家が誕生日パーティーで九条蓮の政略結婚相手を発表する」という話が頭から離れなかった。
高橋美咲は携帯を取り出し、九条蓮に問いただそうとした。
だが、もし自分の勘違いだったら、信じていないと怒られるかもしれない。
長い間悩んだ末、結局携帯をしまった。
どちらにせよ、明日パーティーに行けば真実が分かるはずだ!
……
泉ヶ丘邸。
高橋美咲は時間ぴったりに邸宅の門前に到着し、目立たない場所でしばらく様子をうかがった。
高級車がひっきりなしに出入りし、あちこちに資産家や有名な女優たちの姿が見える。
まさに黒川善が言っていた九条家の誕生日パーティーに違いない。
このあたりで九条蓮の身分にふさわしいレストランなど他にないし、黒川善の話ではこの一帯の土地はすべて九条家の所有だという。なら、他の誰かがここでパーティーを開くのは不可能だ。
やはり九条蓮は黒川善の言う通りの人物なのか?
高橋美咲は門前で長いこと待っていたが、九条蓮らしき姿は一向に現れなかった。もしかして自分の思い違いか、何かの誤解なのかとさえ思い始めていた。
彼女は時間を確認し、九条家の大奥様に電話をかけた。
「お祖母様、今、教えていただいた場所に着きました。」高橋美咲は一度言葉を切り、恐る恐る尋ねた。「ここって、泉ヶ丘邸で合っていますか?」
「そうよ、美咲。裏門で待っていて。今、人を迎えに行かせるから。」
電話はすでに切れていたが、高橋美咲の心はざわついていた。
やっぱり泉ヶ丘邸の中だった。ということは、九条蓮もやはり九条家の一員なのかもしれない。
高橋美咲はスマホをしまい、まっすぐ邸の裏門へと向かった。
ちょうどそのとき、邸の正門に高級車が停まり、佐伯大輔と佐伯葉月が降りてきた。葉月は今日、念入りに着飾っており、上品で落ち着いた美しさが際立っていた。
車を降りた葉月は、偶然にも高橋美咲が去っていく後ろ姿を目にした。
高橋美咲が向かった方向を見つめ、佐伯葉月はわずかに眉をひそめた。
あれは高橋美咲じゃない?
どうして彼女がここに?まさか九条蓮が呼んだの?
いや、それは違う。九条家の大旦那様が両家の縁談を発表する場なのに、高橋美咲をここに呼ぶはずがない。となると、彼女は自分で来たということか。
佐伯葉月がじっと前を見ているのに気づき、佐伯大輔が不思議そうに尋ねた。「葉月、どうした?」
佐伯葉月は視線を戻し、やんわりと首を振った。「なんでもないわ、お父さん。早く中に入りましょう。」
二人が中へ進むと、九条家の執事・森岡海里がすぐに丁寧に出迎え、満面の笑みで「佐伯様、ようこそお越しくださいました。どうぞお入りください!」と声をかけた。
九条家の大旦那様から佐伯大輔をここで迎えるよう指示されていたため、森岡海里は特別に玄関で待っていたのだった。
佐伯大輔は森岡海里と和やかに挨拶を交わした。
そのとき、佐伯葉月が何気ないふうを装いながら口を開いた。「森岡さん、今日の大奥様のお誕生日会には、招待状もないのにこっそり入り込もうとする人がたくさんいるんじゃないですか?」
森岡海里はそれを聞くとすぐに「もちろんです!今日のような場には、来る人はみんなそれなりの方々ですから、誰だって中に入って得をしたいと思うでしょう」と答えた。
佐伯葉月の目が一瞬光った。「確かに。誰か紛れ込んだら困りますものね。」
「おっしゃる通りです。すでに入口には人を配置してあります。絶対に誰にも忍び込ませませんよ」と森岡海里は何度も頷いた。
「正門からはさすがに入れないでしょうけど、裏門は?邸には裏門もありますよね?」佐伯葉月はそう言い、わざと何気ない口調で続けた。「さっき車を降りたとき、妙に挙動不審な女性を見かけたんです。何をしていたのかしら。森岡さん、もしかしてその人、忍び込もうとしてるんじゃ?」
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