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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 432 - 騙されるな

Chapter 432

騙されるな

高橋美咲は黒川善の自宅までついて行った。黒川は自分のプライベートコレクションの一部を取り出し、美咲に選ばせた。最終的に美咲は緑色が入った翡翠のブレスレットを選び、九条蓮の祖母の雰囲気にとても合うと感じた。

「これにするね。お金はすぐ送るから。」そう言って美咲はスマホを取り出し、黒川に送金しようとした。

美咲がきっちりお金のやり取りをしようとするのを見て、黒川の目が一瞬揺れ、心の中で少し寂しさを覚えた。

美咲の心には自分が全くいないのだと感じた。外から見ればとても価値があるものかもしれないが、黒川にとっては何でもないものだった。むしろ美咲にタダであげてもよかったくらいだ。

美咲はすぐに黒川へ送金し、しかも彼のために少し多めに上乗せしていた。

一通り終わった後、美咲はふと思い出したように顔を上げて黒川に尋ねた。「そういえば、この後って時間ある?」

「なんだ、俺を誘いたいのか?俺たちの関係なら、付き合ってやれなくもないけど?」黒川は内心嬉しかったが、美咲の前ではそれを見せたくなくて、あくまで素っ気なく振る舞った。

「違うよ。うちの夫の祖父の体調があまり良くなくて、あなたに診てもらいたいんだ。」

最初はぎこちなかったが、二度目ともなると自然に口にできる。美咲は「うちの夫」という言葉にもどんどん慣れてきて、黒川の前でも平然と言えるようになっていた。

黒川「……」

彼の表情が明らかに変わり、歯ぎしりしながら「俺がそんなに暇だと思ってるのか?」と返した。

高橋恵の診察を優先したのは、完全に美咲のためだった。他の誰かなら、見向きもしなかっただろう。

本当に誰でも簡単に頼めると思っているのか?

美咲の顔に残念そうな表情が浮かんだ。「あ…ごめん!ちょっと聞いてみただけ。もし時間がなければ、他のツテを探すから。」

「じゃあ、私は先に帰るね。今度ご飯でもご馳走するよ。」そう言って美咲は踵を返した。

「待て!」

美咲が立ち止まる。「ん?何かある?」

黒川は悔しそうに「時間作るよ。数日後に連れてきな!」と言った。

くそっ!美咲にはどうしても断れない。

本心では渋々でも、美咲のためならコネを使う気になってしまう。この人生で本気で好きになったのは高橋美咲だけだった。

「本当?」美咲の顔がパッと明るくなり、「黒川くん、ほんとに最高!」とすぐに言った。

さっきまで少し沈んでいた黒川だったが、美咲の笑顔を見てまた気分が晴れてきた。

美咲を玄関まで見送りながら、黒川は何気なく尋ねた。「さっき、明日誕生日会に行くって言ってたけど、どこでやるんだ?」

「泉ヶ丘邸だよ。たぶん病院が近いからじゃないかな。」

美咲は、九条蓮の祖母が九条のお祖父様を気遣って、その場所を選んだのだろうと感じていた。

その言葉を聞いた瞬間、黒川の表情が一変した。

黒川は真剣な口調で言った。「高橋美咲!お前の旦那って一体誰なんだ?泉ヶ丘邸の周辺一帯は九条ホールディングスの所有地で、中にある病院も含めて全部そうだ。一般には開放されてなくて、九条家の関係者しか使えないんだぞ!」

さっきまで美咲が「夫はただの運転手兼アシスタント」と言っていた時は、特に気にしていなかった。

だが今になって考えれば考えるほど、何かがおかしいと感じた。

黒川は本気で、高橋美咲の男が彼女を騙しているのではないかと疑い始めていた。

高橋美咲は、黒川善の言葉を聞いた瞬間、動きを止めた。

すぐに彼女は微笑み、「どういう意味?うちの夫がどんな人かって?普通の人よ」と答えた。

黒川善は表情を鋭くし、「普通の人が泉ヶ丘邸で誕生日パーティーなんて開けるわけないだろ。よく考えてみろ、騙されるな。その男、九条家の人間なんじゃないのか?」と続けた。

高橋美咲のようなお人好しは簡単に騙されそうで、黒川善はつい忠告したくなってしまった。