Chapter 431
九条蓮のお祖母様の誕生日
九条蓮は、九条家の大旦那様が佐伯家との縁談を発表しようとしていると知り、すでに決意していた。
自分の心はもう決まっていると、皆に知らせるつもりだった。
高橋美咲の身元までは明かさないが、既婚者だと周囲に認識させれば十分だ。
それで祖父の小細工も断ち切れる。
自分の女に、絶対に恥をかかせるつもりはなかった。
高橋美咲は大阪の翡翠市場へ直行した。
九条蓮の親族も集まる誕生日会だから、きちんとした贈り物を持って行かないと、きっと笑われてしまう。
年配の方への贈り物といえば、定番は限られている。無難なのは翡翠のバングルだ。
翡翠は身につけると健康に良いと言われているし、贈り物としても体裁がいい。
本当は九条蓮にメッセージを送りたかったが、今は祖父との関係が悪いので、誕生日会に行くのを止められるかもしれない。けれど、もう九条のお祖母様に約束してしまったし、今さら断ればきっとがっかりさせてしまう。
いろいろ考えた末、高橋美咲は連絡を我慢した。
プレゼントを渡して顔を見せ、九条家の大旦那様に自分の存在を見せたら、すぐに帰ろうと決めた。
翡翠市場に入ると、あまりの品数に目が回りそうだった。
ジュエリーデザインの仕事はしているが、翡翠についてはあまり詳しくない。少しかじった程度だ。
そのとき、黒川善から電話がかかってきた。
高橋美咲はすぐに出て「善善、どうしたの?」と聞いた。
「今日は病院に来ないの?」と黒川善が遠慮がちに尋ねる。
「ここ数日は時間がなくて。お母さんのこと、しばらくお願いね。落ち着いたらちゃんとお礼するから。今は翡翠市場で買い物中なの。じゃあね。」
「待って!」と黒川善が困惑気味に言った。「翡翠市場で買い物?そこで待ってて。すぐ行くから。」
高橋美咲が断る間もなく、黒川善は電話を切ってしまった。
そのときになって、高橋美咲は黒川善が翡翠好きだったことを思い出した。彼はかなり上質なコレクションも持っているらしい。だから、彼女が翡翠市場にいると聞いてすぐに駆けつけると言ったのだろう。自分が選び方を知らず、騙されるのを心配しているに違いない。
ほどなくして黒川善が到着し、二人は合流した。黒川善は「どうして急に翡翠を買いに?」と尋ねた。
「えっと…夫のお祖母様の誕生日で、プレゼントを買いたくて。」高橋美咲が九条蓮のことをそんな風に他人に紹介するのは初めてで、少し恥ずかしかった。
高橋美咲の頬に浮かぶ照れたような表情を見て、黒川善は眉をひそめ、目を伏せた。
その幸せそうな顔は嘘じゃなさそうだ。本当にあの男のことが好きなのか?
気分は沈むし、他の男の家族への贈り物選びを手伝うなんて、まさに拷問だった。
高橋美咲は彼の様子に気づかず、「ちょうどよかった。選ぶの手伝って。高すぎるのは無理だから、ほどほどでいいの。お金があまりなくて」と続けた。
黒川善が来る前に、高橋美咲は自分の口座残高を確認していた。本当に余裕はなかった。
指輪を売ったお金以外は、ほとんど母親のために使ってしまい、自分のためにはほとんど残っていない。でも九条蓮のお祖母様の誕生日会は大事だから、その一部を使うと決めていた。
その後、黒川善は高橋美咲を連れて市場を見て回ったが、どれも値段が高い割に質が悪かったり、品質に問題があったりで、どれを買っても損をするだけだった。
黒川善は困ったように言った。「うちに翡翠のバングルが何本かあるから、一つあげるよ。」
他の男の家族への贈り物だとわかっていても、高橋美咲が騙されるのは見過ごせず、自分のコレクションから出すことにした。
「えっ?それはさすがに悪いよ。あなたのコレクションって、どれもすごく高いんじゃないの?」
「俺たちの仲だろ?絶対に損はさせないから。さあ、行こう。」
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