Chapter 43
旧友を訪ねて(続き)
だがすぐに気を取り直す。美咲に知られて何だというのか。証拠はない。柏木健人にやらせたのだから。
柏木健人は自分のことが好きで、何度もこっそり言い寄ってきた。
九条悠真を諦めて彼に乗り換える気は全くないが、その好意を利用して色々やらせることはできる。いざとなれば、柏木健人が捕まるだけで、自分に矛先が向くことはない。
美咲の脅しなど全く意味がない。桜井奈緒には、美咲がただの子猫のように鳴いているだけで、全く存在感がなく、滑稽にしか見えなかった。
「美咲、何のこと?私にはさっぱり分からないわ。」桜井奈緒は平然と笑い、軽蔑の色を隠さなかった。
再び美咲に視線を向け、わざとらしくため息をつく。「はあ、本当に可哀想。手も足も怪我して…九条悠真との婚約パーティー、車椅子で来るしかないんじゃない?」」],
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「犬みたいに吠えても意味ないでしょ?本当に噛みつかないと効果ないよ。私は車椅子なんていらないけど、もし必要なら買ってあげようか?」
「誰が犬よ!」桜井奈緒が怒りをあらわにした。
「もちろんあなたよ。私は狂犬病の予防接種済みだから、怖くもなんともないけど。」
高橋美咲は普段は穏やかな性格だが、まるで小さなフグのように、絶対に相手に主導権を渡さないタイプだった。今も病院のベッドに寝ていながら、口では桜井奈緒に負ける気はなかった。
桜井奈緒は高橋美咲に挑発されて、本当に腹が立っていた。
だが、精神的にタフな彼女はすぐに気持ちを切り替え、高橋美咲を見下ろして冷笑した。「口が達者でも、結局は病院のベッドで寝てるだけじゃない。」
高橋美咲が得意げでいられるのも、あと数日だけだ!
桜井奈緒は何度か鼻で笑い、満足げな足取りで病室を出ていった。
あのうるさい声がやっと消え、高橋美咲は世界が一気に静かになったように感じた。
そのとき、病室のドアが再び開いた。高橋美咲は、桜井奈緒がまだ言い足りずに戻ってきたのかと思い、苛立った顔で「今度は何の用……」と言いかけて言葉を止めた。入ってきたのは九条蓮だった。
高橋美咲は鼻を触りながら、気まずそうに「来てくれたんだ」と言った。
高橋美咲の動揺した様子を見て、九条蓮は低い声で「何かあったのか?」と尋ねた。
「さっき桜井奈緒が来たの。あの女、本当に偉そうでムカつく!私のリグを細工したのも、絶対あいつだと思う。治ったら絶対に許さないから!」と高橋美咲は憎々しげに言った。
高橋美咲の言葉を聞いて、九条蓮の目が暗くなった。
実際に手を下したのは柏木健人だったが、それも桜井奈緒の指示によるものだった。
九条蓮はさっき九条インターナショナルに戻り、本人から直接白状させたばかりだ。真壁直人に命じて柏木健人を一時的に拘束させたが、どう処分するかはまだ決めていなかった。
当初は警察に突き出すつもりだったが、今は考えを変えていた。
「お腹空いてる?」と九条蓮が尋ねた。
その言葉で、高橋美咲は自分の腹に手を当てた。怒りでエネルギーを消耗したせいか、本当にお腹が空いていることに気づいた。
それを見て、九条蓮は「何か買ってくる」と言って部屋を出ていった。
しばらくして、九条蓮がいくつかの夕食の入った袋を持って戻ってきた。
容器を開けて高橋美咲の前に並べ、右腕が三角巾で首から吊られていて不便そうなのを見て「食べさせようか?」と声をかけた。
高橋美咲は少し恥ずかしかったが、今は本当に手が使えず、左手も不器用で箸を持つのは難しそうだった。仕方なく彼に頼るしかない。
彼女は気まずそうにうなずいた。「うん、お願いしてもいい?」
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