Chapter 424
私はもう結婚している
まずは敵を知ることが先決だと考えた。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」だ。
高橋美咲は一瞬固まった。「出張があって、今は時間が取れないの。」
黒川善は幼い頃から高橋美咲と一緒に育った。彼女のちょっとした間もすぐに気づき、まだ決定的な段階ではないのかもしれないと感じた。
本来なら、母親のこととなれば、たとえ事前に知らなくても、婿として一緒に来るのが普通だ。
だが、高橋美咲は一人で来ていた。
つまり、あの男に言葉巧みに騙されて、憧れを抱いているだけなのかもしれない。
黒川善は少し自信を取り戻した。
食事が終わった後、黒川善は自分の家に泊まるよう勧めたが、高橋美咲は丁寧に断った。大阪の高橋家には戻れなくても、泊まる場所がないわけではない。
彼女は早く母親に会いたくて、黒川善に病院へ連れて行ってほしいと頼んだ。
結局、黒川善は高橋美咲を病院まで送り、ついでに高橋恵の簡単な診察もすることにした。
ほどなくして、高橋美咲と黒川善は無事に病院へ到着した。
高橋美咲の母・高橋恵は、十五年近く前に交通事故で植物状態になり、ずっとこの個人病院で寝たきりだった。普段は介護士が世話をし、高橋美咲に余裕がある時は自分で看病していた。
向かう途中、高橋美咲は新鮮な花束を買っていた。高橋恵は意識が戻らず食事もできないので、花の方がふさわしいと思ったのだ。
病院に着くと、黒川善は主治医を探して状況を聞きに行った。
高橋美咲はベッド脇に座り、タオルで高橋恵の顔を丁寧に拭いた。
手厚い看護のおかげで、高橋恵は少し痩せて弱々しく見えるものの、今も美しく魅力的だった。高橋美咲の高い鼻筋は母親譲りで、白い肌や繊細な顔立ちもよく似ていた。
まもなく、黒川善が戻ってきた。
「美咲、お母さんの容態はもう把握したよ。本当に希望はある。ただ治療はかなり複雑だから、僕の病院に転院してもらいたい。そっちの方が何かと便利だし、僕ももっと面倒を見られるから。」
実際のところ、黒川善には私心もあった。高橋恵はこのままでも問題なかった。
だが、高橋美咲と接する機会を増やしたくて、高橋恵をきっかけにするのが一番だと思ったのだ。
結局、高橋美咲は一切迷わずすぐに同意した。黒川善が母親の治療をしてくれるなら、場所はどこでも構わなかった。
そのまま転院手続きを済ませた。
すべてが終わった頃には、すでに十二時近くになっていた。黒川善は高橋美咲を昔借りていたアパートまで送り届けてから帰った。
しばらく掃除していなかった部屋は、ほこりが積もっていた。高橋美咲はしばらくかけて片付け、ようやく安心して眠りについた。
今回は母親のことで早めに大阪に来た。明日は病院で母親と過ごし、明後日は九条蓮の祖母に会いに行く予定だ。
九条蓮のことを思い出し、高橋美咲は携帯を取り出してメッセージを送った。「もう寝た?今何してる?」
思いがけず、九条蓮からの返信はとても早かった。高橋美咲がメッセージを送ってから、ほどなくして返事が届いた。
九条蓮:「今、やっと落ち着いたところ。どうした、俺のこと恋しくなった?」
九条蓮にこんなことを言われたのは初めてで、高橋美咲は思わず口元がほころび、胸の奥が甘く満たされた。
本当に、少し恋しくなっていた。
今日一日、黒川善と話す中で何度も九条蓮のことを口にしたせいか、彼の姿がずっと頭から離れなかった。まさに一日中、彼のことを考えていたと言ってもいい。
高橋美咲は隠すことなく、素直に「そうよ。一日中あなたのこと考えてた」と送った。
九条蓮は高橋美咲の返信を見て、口元が自然と上がった。彼女の可愛らしい顔と、その言葉を口にする時の表情が目に浮かぶようだった。
You might also like




