Chapter 421
危うく間違えそうになって
高橋美咲は席に座ると、周囲を見回して様子を確認した。
ビジネスクラスに乗るのは初めてではなかったが、それはまだ高橋家のお嬢様だった頃の話。今は質素な暮らしに慣れてしまい、すっかり遠い世界になっていた。
ふと、隣の中東系の男性に目が留まる。その体格がどこか見覚えがある気がした。
そういえば、さっき搭乗した時に九条蓮にそっくりな人がいたけど、この人なのかな?
高橋美咲は首を振って自分に苦笑した。本当に自分は九条蓮に夢中なんだな、と。どこを見ても彼に見えてしまう。ほんの少し離れただけで、もう恋しくなっているなんて。
ピロン――突然スマホが鳴った。
高橋美咲はスマホを取り出して画面を見た。九条凛からのメッセージだった。
今どこにいるのか聞かれ、「会いに行って一緒に遊びたい」と書いてある。
その時になって、高橋美咲は他のことで忙しくしていたせいで、九条凛に大阪へ行くことを伝え忘れていたことに気づいた。慌てて「お母さんに会いに大阪に行くんだ」と返信した。
九条蓮のお祖母様にも会いに行くことは、九条凛がうっかり口を滑らせるのが怖くて言わなかった。
でも、お母さんに会いに行くのは本当だし、九条蓮のお祖母様のことはついでみたいなもの。
メッセージを見て、九条凛の心配も徐々に和らいだ。高橋美咲のお母さんは長年植物状態で、個人の医療施設に入院していることを知っていたからだ。
もし高橋美咲が九条家の大奥様の誕生日会に来るのだとしたら、鉢合わせしたら大変なことになる。
でもよく考えれば、高橋美咲と高橋家の関係は良くないし、高橋家も今回の九条家の誕生日会には招待されていない。きっと誕生日会には現れないだろうし、本当にお母さんに会いに行くだけなのだろう。
九条凛:「そっか。今、飛行機乗ってるの?」
「うん、そうだよ。凛、びっくりするよ――中東系の男性で、九条蓮にすごく似てる人を見かけたの。もし九条蓮が九条真人と出張に行ってるって知らなかったら、間違えそうになっちゃった。」
九条凛:「…」
もしかして、その中東系の男性って本当にお兄ちゃんじゃないの!?
九条凛は慌てて高橋美咲に笑顔のスタンプを送り、何も気づいていないふりをした。
その時、機内アナウンスで離陸準備が告げられ、高橋美咲はスマホをしまった。
大阪は東京からそれほど遠くない。機内食のサービスもなかった。もしあったら、九条蓮は顔を隠していられず、また一騒動になっていただろう。
九条家の面々はじっと我慢していた。トイレに行くことすらできず、高橋美咲に見つかるのを恐れていた。幸い、飛行機は無事に大阪の関西国際空港に到着した。
高橋美咲が荷物を取る時、隣の数人は微動だにしなかった。客室乗務員が降機を促しに来ても、曖昧に断って動かない。その様子に高橋美咲は不思議に思い、なぜこの乗客たちは降りようとしないのかと首をかしげた。どこか変だと感じたが、
特に気にせず、キャリーケースを引いてさっさと飛行機を降りていった。
高橋美咲が去った後、九条凛はまるで恩赦を受けたかのように、今にも泣き出しそうだった。
ああ、もう!
本当に緊張で死ぬかと思った。ずっと息をひそめていたけど、高橋美咲にバレなくてよかった。
早く空港を出ないと、またどこかで高橋美咲に会ってしまうかもしれない。
高橋美咲は空港を出た。目の前に広がる光景は、懐かしくもあり、どこかよそよそしくもあった。大阪、久しぶりだ。
ほんの少し離れていただけなのに、戻ってきた今は、まるで以前の出来事が前世のことのように感じられる。
「レモンちゃん!」
その親しみのこもった呼び名を耳にした瞬間、高橋美咲は思わず出口付近の人混みに目を向けた。そして、そこにいたのは思いもよらない人物だった。
黒川善?
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