Chapter 419
黒川家の誰かを呼ぶ(続き)
もし高橋美咲が、九条蓮が自分を連れずに九条家へ戻ると知ったら、きっと怒るだろう。
しかも九条蓮が身分を隠している件もある。いろいろ重なれば…
その雪だるま式の事態を想像するだけで怖いので、今はまだ高橋美咲には何も言えない。九条蓮が大阪へ祖父母に会いに行くことすら、彼女には内緒だ。
九条蓮はカジュアルな服装で、ひときわ端正な顔立ちが際立っていた。
九条凛の言葉を聞くと、彼は口元にうっすらと微笑みを浮かべて「バレてないよ。出張だって言っておいたから」と答えた。
「それならよかった!時間がないから急ごう。」
そう言いながら、一行は搭乗ゲートへと向かった。
九条蓮の立場を考えれば、当然ビジネスクラスが予約されており、エコノミークラスより先に搭乗できる特典があった。スタッフのチェックを受けた四人は、荷物を持って搭乗通路へと進んだ。
同じ頃、高橋美咲もスーツケースを引きながら急いで搭乗口に並び、息を切らして立っていた。
危うく遅刻するところだった!
九条蓮が出発するのを待ってから空港に向かったため、かなり時間がかかってしまったが、なんとか間に合った。
ふと高橋美咲は、見覚えのある何人かの姿を目にした。あの人、九条蓮や九条凛にそっくりじゃない?
高橋美咲がよく見ようとする前に、その姿はすでに視界から消えていた。
彼女の瞳に困惑の色が浮かんだ。
九条蓮は出張中で、たぶん九条社長と一緒に移動しているはずだった。九条凛と一緒にいるなんて考えにくいし、きっと見間違いだろう。
しばらく列に並んだ後、ようやく高橋美咲の番が来た。スタッフからパスポートを返してもらい、そのまま搭乗口を通って機内へと進んだ。
ファーストクラスの座席には、九条凛と九条蓮が並んで腰を下ろしていた。
その時、他の乗客たちも次々と搭乗し始めた。九条凛は鋭い目で高橋美咲の姿を見つけ、顔色が一変。隣のブランケットをつかむと、いきなり九条蓮の頭に被せた。
誰も九条凛にどんな突発的な発作が起きたのか分からなかった。九条蓮がブランケットを取ろうとした瞬間、九条凛は身を乗り出してさらにしっかりと覆いかぶせ、ほとんど窒息しそうなほどきつく押さえつけた。
九条蓮「……」
高橋美咲は背を向けていたため、九条凛にも、頭を覆われた九条蓮にも気づかず、そのままキャビンの奥へと歩いていった。
危機一髪で難を逃れたことに、九条凛はようやく胸が張り裂けそうだった鼓動が少し落ち着いてきた。
ううう……本当に心臓が止まるかと思った!!
しばらくしてようやく、九条蓮は九条凛のしつこい手を振りほどいた。
彼は眉間に深いしわを寄せ、不機嫌そうに言った。「九条凛、何してるんだ?」
「シーッ!」九条凛は声を潜めて九条蓮の耳元で囁いた。「ヤバいよ。高橋美咲だよ。なんであの子までこの便に乗ってるの?見つかったらどう説明するの?」
それを聞いて、九条蓮は困惑した表情を浮かべた。
高橋美咲は今日は仕事のはずじゃなかったか?なぜここにいる?しかも大阪行きの飛行機に乗っているなんて。
彼はスマートフォンを取り出し、水城圭介に高橋美咲のことを尋ねるメッセージを送った。
5分も経たないうちに、水城圭介から返信が届いた。
メゾン・ヴェルヌに確認しに行ったところ、高橋美咲は3日間の休暇を取っているとのことだった。
九条蓮は少し困ったようにスマートフォンをしまった。高橋美咲がなぜ急に大阪へ行くことにしたのかは分からないが、今一番の問題は、絶対に自分の居場所を知られてはいけないということだ。何より、九条凛と一緒にいるところを見られたら、どんな言い訳も通じない。
この時になって初めて、九条蓮は「自業自得」という言葉の意味を痛感した。
一つの嘘を隠すためには、いくつもの嘘を重ねなければならないのだ。
……
高橋美咲は自分の席に腰を下ろした。
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