Chapter 411
泣いて許しを請う羽目にならないように
柳小路はさっきまでの陰りを一掃し、少し恥じらいを帯びた様子で嬉しそうに歩み寄り、「来てくれたんだ」と声をかけた。
だが、現れた九条社長は九条蓮ではなく、水城圭介だった。
水城圭介はすべてを九条蓮に報告した後、ちょうどメゾン・ヴェルヌの関係者が誰かを招待しに来るのに出くわした。九条蓮が都合よく姿を見せられなかったため、水城に任せるしかなかったのだ。
加藤千尋は柳小路が水城圭介にまとわりつくのを見て、これが九条蓮だと思い込んだ。
彼女はまだ九条蓮に会ったことがなかった。
九条インターナショナルの社長はあまりにも謎めいていて、社員の間でも実際に見たことがある人はごくわずかだった。公の場に現れる部下の井上勝の方が、むしろ有名なくらいだった。
多くの人がすぐに愛想笑いを浮かべて駆け寄り、親しげに「九条社長、こんにちは」と挨拶した。
皆の熱烈な歓迎に対し、水城圭介は九条蓮のいつもの冷たく近寄りがたい態度を真似て、軽くうなずくだけだった。
彼が特に愛想よく応じなくても、メゾン・ヴェルヌの社員たちは興奮を隠せなかった。
「九条社長!ついにお目にかかれて光栄です!」
「想像してたのとはちょっと違うけど、やっぱり九条社長って素敵だよね。」
「柳小路が本当に九条社長を捕まえたなんて、信じられない!もう、羨ましすぎて死にそう!」
……
柳小路に後ろ盾ができたのを見て、加藤千尋の目にも羨望の色が浮かんだ。この気持ちは本当に嫉妬で気が狂いそうだった。自分にもこんなチャンスがあればいいのに、と。
だが、問題ない。柳小路にしっかり取り入っておけば、今後いくらでもチャンスは巡ってくるはずだ。
そう思いながら、高橋美咲を一瞥し、嘲るように鼻で笑った。「見た?九条社長が来てるのよ。いつまで強気でいられるか見ものね。後で泣いて許しを請う羽目にならなきゃいいけど!」
高橋美咲の目がわずかに陰った。
九条社長は柳小路の彼氏なのだから、彼女を助ける可能性は十分にある。
だが、自分は何も悪くない。このまま今日辞めることになっても、絶対に潔白を証明してみせる!
彼女の目は徐々に決意に満ち、心をしっかりと固めた。
その頃、柳小路たちは挨拶を終え、水城圭介や数人とともにこちらへ歩いてきた。
周囲のメゾン・ヴェルヌ社員たちの羨望の視線を感じながら、柳小路は何とも言えない優越感に浸っていた。まるでピラミッドの頂点に立つ女王のような傲慢さが表情ににじんでいた。
加藤千尋もまた、権力を借りて威張り始めた。高橋美咲のもとへ来るなり、すぐにきつい口調で言い放った。「高橋美咲、九条社長が来たんだから、今すぐ謝罪文を書いて、自分の非を認めて公表しなさい。それから荷物をまとめてメゾン・ヴェルヌから出て行きなさい!」
水城圭介は加藤千尋の言葉を聞いて、思わず吐血しそうになった。
背中に冷や汗が噴き出す。
何を言ってるんだ!?
もし九条蓮に、自分が高橋美咲をこんな風に扱ったと知られたら、確実に終わりだ。
自分は高橋美咲を守るために来たのに!
加藤千尋はそう言い終えると、得意げな表情で高橋美咲を見下ろした。
高橋美咲は、ピエロのように跳ね回る加藤千尋を冷ややかに見つめるだけだった。ついに生きた忠犬を目の当たりにした気分だった。
腕を組み、加藤千尋を斜めに見やりながら、淡々と言った。「あんた、何犬?よく吠えるわね。」
「なっ……!」加藤千尋の顔は怒りで真っ黒になった。高橋美咲に犬呼ばわりされたのだ。
歯ぎしりしながら、周囲の人に合図して警備員を呼び、高橋美咲に無理やり罪を認めさせようとした。
今回の件をここまで完璧に仕切ったのだから、九条社長から一目置かれるに違いない。
高橋美咲の不興を買うのを恐れた水城圭介は、慌てて前に出て冷たく言い放った。「黙れ!」
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