Midnight FableMidnight Fable

裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 406 - 九条蓮には言わないで

Chapter 406

九条蓮には言わないで

高橋美咲ならスケッチの復元くらい簡単だと分かってはいたが、期限通りに仕上げてくるとは少し驚いた。

何しろ、あのスケッチは汚れやシミが多く、原型がほとんど分からない状態だったので、復元は難しかったはずだ。

ようやく森川茉莉もほっと胸をなでおろした。スケッチが復元されたことで、クビにならずにメゾン・ヴェルヌにいられる。よかった!

柳小路の声に疑いが混じっているのを聞き、森川茉莉はすかさず「柳小路さん、三日以内にスケッチを復元できたらそれで不問にするって言ったのはあなたですよ。ほら、ここにちゃんと復元されたスケッチがあります。みんなも見てます」と言った。

周囲の何人かも頷き、「本当に復元されてる」と口々に言った。

スケッチをじっと見つめて、ひそひそと話し合う人たちもいた。

「なんか高橋取締役が復元したスケッチの方が、柳小路さんのよりずっと上手くない?この線の滑らかさとか、細部もすごいし」

「だよね。あんなに汚れてたら、元が何だったか分からないはずだし、高橋取締役が自分で描き足したんじゃない?」

「だって高橋取締役はQueenだし、皇彩堂アカデミー出身だよ。柳小路さんより腕が上でもおかしくない」

柳小路は将来の女社長とはいえ、公平な目で見る社員も多く、復元されたスケッチを見て高橋美咲を擁護する声が上がった。

森川茉莉は得意げに顎を上げた。高橋美咲が柳小路より優れているのは当然だ!

周囲の会話を聞き、柳小路は皆が高橋美咲の方が自分より上だと思っていることに気づいた。

顔色が一気に曇り、手元がぎゅっと握りしめられる。

くそっ!

まさか高橋美咲が、こんなことで皆の称賛を集めるとは思わなかった。今は得意げかもしれないが、すぐにそんな余裕はなくなるはずだ!

柳小路は薄く笑って「いいわ。スケッチを復元したなら、これでこの件は終わりにしましょう」と言った。

そう言い残し、スケッチを手にしてその場を立ち去った。

柳小路の背中を見送りながら、高橋美咲はなんとなく嫌な予感がした。

何しろ昔高橋グループで一緒に働いていた頃から、柳小路の性格はよく分かっている。今回これだけの屈辱を味わって、簡単に引き下がるはずがない。そんな大人しい性分じゃない。

柳小路が何を仕掛けてきても、怖くない。どんな手でも受けて立つ!

隣で森川茉莉は、柳小路が何も言わずに去っていくのを見て、口元に笑みを浮かべた。「高橋取締役!今回は本当にありがとうございました。高橋取締役がいなかったら、私はもうここにいられなかったと思います!」

高橋美咲は我に返り、ほんのり微笑んだだけだった。

そして森川茉莉の肩に手を置き、「さあ、仕事に戻って。これからはもっと気をつけてね」と声をかけた。

柳小路は席に戻ると、手に持っていたスケッチを机に投げつけて鬱憤を晴らした。今回、高橋美咲は全く傷つかず、逆に皆から称賛まで受けてしまった。

本当に腹立たしい!

柳小路の目には陰険な光が宿る。机に投げたスケッチを見つめ、仕込んでおいたことを思い出すと、表情が少し和らいだ。

高橋美咲をこんな簡単に許すはずがない。

もうすぐ、高橋美咲は九条インターナショナルで、かつて高橋グループでやったのと同じ失敗をして、みじめに会社を去ることになる。

その時には評判も地に落ち、二度とジュエリーデザイン業界に戻れなくなるだろう!

柳小路は低く不気味に笑った。

一日はあっという間に過ぎた。高橋美咲がちょうど退勤しようとした時、森川茉莉が血相を変えて駆け寄ってきた。

息も整わないまま、高橋美咲に「そ、高橋取締役、大変です!大変なことが起きました!」と訴えた。

高橋美咲は表情を引き締め、眉をひそめた。「落ち着いて。ゆっくり話して。何があったの?」