Chapter 400
私を拒まないで
高橋美咲の身体は抵抗していたが、心の奥では彼のぬくもりを求めていた。その相反する気持ちがせめぎ合い、結局、彼女は男に深くキスされるままになった。
高橋美咲が徐々に力を抜いていくのを感じて、九条蓮はさらに彼女に近づかずにはいられなかった。
何度も吸い上げられ、高橋美咲は全身が力なくなり、彼の腕の中でぐったりとするしかなかった。
しばらくして、九条蓮は高橋美咲を解放した。
息が整わず、頬は真っ赤。まるで熟れた桃のように色っぽく、九条蓮はまたキスしたくなってしまう。
だが、高橋美咲は彼の意図を察し、思わず手を伸ばして彼の胸を押しとどめた。
「九条蓮……ご飯にしよう。」
このままじゃ、もう隠しきれなくなってしまう。
九条蓮は少しかすれた声で「うん」と返事した。
解放されると、高橋美咲は顔を真っ赤にして、逃げるように料理に没頭した。心の中で泣きたいのに涙も出ない。
なんで同棲した途端、こんなに自分が追い詰められることになるんだろう。
早く九条家軽井沢別邸で何があったのか調べなきゃ!
夕食はほとんど箸が進まず、高橋美咲の様子に九条蓮もすぐ気づいた。食事が終わると、彼は「美咲、ちゃんと話をしようか」と言った。
高橋美咲は一瞬固まった。
九条蓮が今から全部話すつもりなんじゃないか。あるいは、自分があまりにも分かりやすく態度に出てしまったのかもしれない。普通の男だって欲求はあるし、いつまでもこのままじゃいけない。
そっと目を閉じて、心の中でため息をついた。
もういい。言ってしまおう。腹をくくるしかない!
二人はソファに並んで座った。高橋美咲はうつむき、ひどく落ち込んだ様子だった。
どこから切り出そうか考えて——
「九条蓮、あの日私……」
高橋美咲が言いかけたとき、目の前に銀行のカードが差し出された。
言葉が止まる。
「これ、何?」
「銀行のカードだ。」
「それは分かるけど、なんで私に?」
九条蓮は口元に微笑みを浮かべて「家を買いたいんだろう。これは俺の給料振込口座だ。これからは美咲に預ける」と言った。
すでに真壁直人や水城圭介たちと同じ額の給料が毎月このカードに振り込まれるよう手配してある。
高橋美咲は思わず口を開けて驚いた。まさか九条蓮が話したかったのは……家計を預けることだったなんて!
うそでしょ!さっきまで勇気を振り絞っていたのに、その一言で全部吹き飛んでしまった。
もう何も言えなくなってしまった。
九条蓮は「給料はそんなに高くないけど、基本給以外にもボーナスや手当があるから、まあまあだと思う」と言った。
「えっと……」高橋美咲は少し呆然としながら、小さな声で「全部預からなくてもいいよ。毎月自分の分を引いて、残りを私に渡してくれれば」と返した。
「いや、いいよ。九条インターナショナルは食事も出るし、普段はほとんど使わないから。」
高橋美咲は絶句した。こんな完璧な男、どこにいるの?
まるで歩くATM。稼いだお金を一円残らず預けてくれるなんて、本当に感動ものだ。
そう言い終えると、九条蓮は立ち上がった。「夕飯作ってくれてありがとう。ゆっくり休んで。皿は俺が洗うから。」
そう言ってキッチンへ向かった。
高橋美咲はその場で呆然と立ち尽くしていた。しばらくしてようやく我に返る。
え、ちょっと待って!
九条蓮って、てっきりそういう話をするつもりだったんじゃないの?
まさか給料のカードを渡すだけだったなんて?
でも、九条蓮はもうその話を終わらせた雰囲気だ。今さら自分から切り出したら、自爆するだけじゃない?
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