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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 399 - 九条社長は恋人を昇進させたい

Chapter 399

九条社長は恋人を昇進させたい

心が大きく揺れた。

高橋美咲はずっと代官山パークレジデンスのマンションを買いたいと思っていた。あの場所には九条蓮との思い出が詰まっているからだ。

たとえ九条蓮との今後がどうなるか分からなくても——

それでも、二人で暮らしたあの場所だけは、どうしても自分のものにしたかった。

九条蓮はゆったりと高橋美咲を見やった。彼女が代官山パークレジデンスをとても気に入っていることは、以前本人から聞いて知っていた。でも今の自分はただの運転手兼アシスタントという立場なので、直接プレゼントするのは不自然だ。

表向きは彼女自身が勝ち取ったように見せて、裏でそっと手を貸す。それが一番良い方法だと思った。

高橋美咲の表情が何度も変わるのを見て、九条蓮は彼女が心を決めたと確信した。

案の定、高橋美咲はもう迷いなく「決めた!私、応募する!」と宣言した。

九条蓮の口元がわずかにほころぶ。「うん、頑張って。」

二人は帰り道に市場で食材を買い、代官山パークレジデンスに戻ると、高橋美咲はすぐにキッチンに立った。

高橋美咲がメインで料理を進め、九条蓮が横でサポートする。二人の息はぴったり合っていた。

高橋美咲はふと九条蓮に目を向けた。彼の長く整った指が箸を持ち、卵を均一に溶いている。手際も慣れていて、動きに無駄がない。

上から照明の光が降り注ぎ、彼の顔立ちをより一層際立たせていた。

高橋美咲は思わず心の中で「危険なくらいカッコいい」とため息をついた。

以前のように家事で失敗することもなくなり、今では自分と完璧に息を合わせてくれる。ここまで育て上げたのに、他の女性に渡すなんてもったいない。

九条蓮は高橋美咲が自分をじっと見つめ、しかも憧れのまなざしを向けていることに気づき、内心とても満足だった。

つまり、彼女が自分に何も感じていないわけではなく、ただ心に傷を残しているだけなのか。

九条凛の言葉を思い出し、やはり一度挑戦してみるべきだと考えた。

九条蓮は手に持っていたボウルを置き、そのまま高橋美咲の方へ歩み寄った。

高橋美咲は九条蓮が近づいてくるのを見て、心臓がドキドキし始めた。彼が何をするつもりなのか分からず、気づけばすぐ目の前にいて、二人の距離がとても近いことに初めて気づいた。

腰がカウンターに当たり、もう後ろに下がれない。まるで全身が彼の腕の中に包まれているようだった。

「き、九条蓮、何するの?」

九条蓮は目線を落とし、目の前の繊細な顔を見つめて言った。「君が僕に慣れるためには、もっとそばにいる必要があるんだ。」

その言葉を聞いた瞬間、高橋美咲の心が大きく揺れた。

実は九条蓮の存在には十分慣れている。ただ、自分の事情がバレるのが怖くて、わざと距離を取っていただけだった。

九条蓮がそっと手を伸ばし、高橋美咲の肩に触れる。全身が固まり、また逃げ出したくなったが、もう逃げ場はなかった。

「あ、あの……料理が焦げちゃう……」と、うわずった声で言った。

九条蓮はおかしそうに笑った。「まだ火もつけてないよ。」

高橋美咲「……」

「美咲、俺を拒まないで。」

九条蓮にそう言われて、高橋美咲はなぜか無性に後ろめたさを感じた。

本当にわざとじゃない。ただ、不安や心配、いろんな感情が積み重なって、心の中がざわつき、思わず彼の距離を本能的に拒んでしまっていた。

九条蓮はどうしても高橋美咲に近づき、できるだけ早く自分の存在に慣れてほしいと思っているようだった。彼はそっと彼女の顎を持ち上げた。

そして、ゆっくりと彼女の柔らかな唇を覆った。