Chapter 398
もちろん、もっと彼女に近づくべきだよ(続き)
その後、何とか事態は収拾したものの、心には大きな傷が残った。だからまたリーダーの話を聞いても、普通の人のようにはしゃぐ気にはなれなかった。
仕事が終わった後、高橋美咲は九条蓮から「迎えに来た」とメッセージを受け取った。
階下に降りると、彼の車が目の前に停まっていた。
高橋美咲は車のドアを開けて乗り込んだ。
「今日の仕事はどうだった?」と九条蓮が何気なく尋ねた。
ちょっとしたトラブルを思い出し、高橋美咲はこめかみがまたじんわり痛み始めた。柳小路の作品修復はあと3日ほどかかりそうで、それが終わってようやく一段落する。
「ちょっとしたアクシデントはあったけど、大丈夫。私が何とかするから」
九条蓮に心配をかけたくなくて、深刻な部分は避けて軽く伝えた。
だが、メゾン・ヴェルヌの責任者選びの話を思い出し、「それと、桜井奈緒が解雇されて、今メゾン・ヴェルヌは責任者不在なの。上から社内選考でリーダーを決めるって通知が来て……」と付け加えた。
少し間を置いて、高橋美咲はため息混じりに「たぶん、九条社長が彼女を昇進させるために動いてるんじゃないかな」と言った。
九条蓮「……」
もし高橋美咲が自分の正体を知らなければ、今この瞬間、彼女がすべてを見抜いているのかと疑ったかもしれない。本当に彼女を昇進させようとしているのだから。
だが高橋美咲にとって、九条社長とは水城圭介のことだった。],
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それに加えて、水城圭介も最近恋人ができたばかりで、その相手はメゾン・ヴェルヌのデザイナーらしい。
だから高橋美咲がそう考えるのも無理はない。
九条蓮は少し咳払いをして、どこか気まずそうに「九条社長がその決定を下したのは事実だけど、公平で公正な人だと思う。身内びいきや出来レースなんてしないよ」と言った。
心の中で、そっと自分を褒めていた。
しかし高橋美咲はあまり気にしていない様子で「それはどうかな。恋人なら当然助けるでしょ。今日、私のアシスタントにも応募するか聞かれて、まだ迷ってるの」と言った。
以前の出来事の影響もあるし、今回のコンペも九条社長が柳小路のために用意した出来レースで、他の参加者はただの人数合わせなんじゃないかと不安だった。もしそうなら、わざわざ労力を使って参加する意味はない。
高橋美咲がさらに何か言おうとした時、九条蓮が「応募した方がいい」と言うのが聞こえた。
「え?」高橋美咲は驚いて九条蓮を見つめ、「私にコンペに出てほしいの?」と尋ねた。
まさか九条蓮が自分の参加を後押ししてくれるとは思っていなかった。そんなに自分に自信を持ってくれているのだろうか。
「もちろん。君はとても優秀だし、そのポジションもきっと上手くやれるよ。」
もちろん九条蓮は、自分が裏でこっそり手を回していることなど高橋美咲に言えるはずもなく、半分だけ本当のことを口にした。
「でも……」高橋美咲はためらった。
自分がチームをまとめられるか不安だったし、もし失敗して何か問題が起きたら、チームの皆に迷惑をかけてしまうのではと心配だった。
思いがけず、九条蓮が続けて「九条インターナショナルのマネージャーになれば、代官山パークレジデンスの購入資格が得られるし、しかも10%割引もある」と言った。
高橋美咲は目を大きく見開いて驚いた。
「えっ!?」
代官山パークレジデンスの購入資格があって、しかも10%割引?
本当なの?九条インターナショナルの管理職の福利厚生がこんなに良いなんて思いもしなかった。代官山パークレジデンスは東京でもトップクラスの高級住宅地で、人気が高すぎてなかなか手に入らない場所だ。普通の人ならお金があっても、地位がなければ買えない!
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