Chapter 395
あなたも辞めたら?(続き)
高橋美咲は席に戻ると、デザイン画を広げた。コーヒーで汚れてはいたが、下書きはまだはっきり残っている。少し手を加えて描き直せば、彼女の実力なら難しいことではなかった。
「高橋部長、これ本当に復元できるんですか?」と森川茉莉が心配そうに尋ねた。
「できるわ。」
その言葉を聞いて、森川茉莉の眉間の緊張がようやく解け、ほっとした表情を見せた。「よかった……本当に復元できるなら、クビにならずに済みますね。」
森川茉莉の言葉に、高橋美咲は微笑んだ。「大丈夫よ。こんなことで辞めることにはならないから。」
「高橋部長、本当にありがとうございます!」
森川茉莉は目を潤ませて高橋美咲を見つめ、心から感謝していた。
高橋美咲は小さくため息をつき、「今回はこれで済んだけど、これからも平穏とは限らないわ。森川さん、今後はもっと気をつけて。隙を見せないように、それから……本当に辛い思いをさせてごめんね」と言った。
今回の件は森川茉莉が原因だったが、実際に狙われた理由は高橋美咲のアシスタントだからだった。
高橋美咲に謝られて、森川茉莉は慌てて手を振った。
「高橋部長、私は全然辛くありません。アシスタントですから、こういうことも覚悟しています。私が不注意だっただけです。これからはもっと気をつけます。」
その言葉に、高橋美咲の口元がわずかにほころんだ。
森川茉莉は、状況をよく見て動ける子で、巻き込まれても恨むことなく、しっかりしているようだった。
「じゃあ、一緒にデザイン画を復元しましょう。」
「はい!」
ふと高橋美咲は何かを思い出し、表情が少し真剣になった。
「そうだ、今日から私が手描きで復元する様子を毎日動画で記録して、ネットにアップして。絶対に一日も欠かさないで。」と森川茉莉に言った。
「えっ?でもこのデザイン画、まだ正式発表前ですよ?そんなに公開しちゃって大丈夫なんですか?」と森川茉莉は戸惑った。
「じゃあ、あなたの鍵アカウントに投稿して。誰にも見られないように。」
高橋美咲がこう指示したのは、以前の出来事があったからこそ、また何か仕掛けられるのを警戒してのことだった。
「分かりました。ちょうど誰もフォローしていない鍵アカウントがあるので、そこに投稿します。普段は愚痴用なんですけど。」
「うん、じゃあ始めましょう。」
こうして二人は柳小路のデザイン画の復元作業に取りかかった。さっきの小さな騒動も、煙のようにすぐ消え去り、何の影響も残さなかった。
九条インターナショナル社長室。
水城圭介は恭しい表情で九条蓮の前に立ち、「九条社長、最近九条悠真があなたのことを調べているようです」と報告した。
九条蓮は手元の仕事を止め、目を上げて水城圭介を見た。
「部下が調べたところ、九条悠真は最近、あなたの隠し撮り写真を高値で買い取ろうとしているようです。ただ、記者たちは以前に撮った写真をすべて破棄していますし、もし誰かが個人的にコピーを持っていたとしても、誰も彼に売る勇気はありません」と続けた。
九条蓮はこの役立たずの甥を相手にしたことはなく、高橋美咲が彼の元に戻ることも全く恐れていなかった。
彼は小さく鼻で笑った。「放っておけ。」
今、九条蓮の頭にあるのは別のことだった。
桜井奈緒はすでに退職し、今やメゾン・ヴェルヌの新設ジュエリー部門には責任者が必要だった。彼は高橋美咲にそのポジションを任せたいと思っていた。
だが、今の自分の立場では直接それをすることはできない。
最善の方法は、高橋美咲が自然な形でそのポジションに就き、かつ誰もが納得できる形にすることだった。
九条蓮は目を上げて水城圭介に指示した。「メゾン・ヴェルヌは最近リーダーが不在だ。全社員から選抜するよう伝えてくれ。」
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