Chapter 393
権力を振りかざして人をいじめる
加藤千尋もメゾン・ヴェルヌのデザイナーの一人。柳小路が社長夫人になったと知るや否や、真っ先に媚びを売りに行った。
今は柳小路を喜ばせるために、森川茉莉を容赦なく責め立てている。
まるで柳小路の腰巾着そのものだった。
森川茉莉の顔は真っ青なまま。どうしても仕事を続けたくて、ついに柳小路の袖をつかみ、必死に懇願した。「柳小路デザイナー、どうかお許しください。退職だけは勘弁してください。家には両親もいて、私が支えなきゃいけないんです。お願いします……」
必死にすがる森川茉莉の姿を見て、柳小路はすっかり気分が良くなった。
この前は自分に謝らせて、いい気になっていたくせに。
高橋美咲の腰巾着をやっていた時は、後のことなんて考えなかったの?
今になって、ようやく自分の前で許しを乞う羽目になったわけだ。
高橋美咲本人じゃなくても、森川茉莉は高橋美咲の部下みたいなもの。つまり高橋美咲が頭を下げたのと同じじゃない?
そのうち高橋美咲も、自分に謝る日が来るはずだと柳小路は信じていた。
柳小路は森川茉莉が自分の服をつかんでいる手元に目を落とし、嫌悪の色を浮かべて言った。「私の服、汚さないで。」
森川茉莉は慌てて手を離した。
柳小路の表情が少し和らぎ、口元に薄い笑みを浮かべて言った。「許してほしいなら、まず私に土下座して謝りなさい。あなたの態度を見てから、許すかどうか考えてあげる。」
そう言うと、柳小路は腕を組み、森川茉莉が謝るのを待った。
柳小路が言ったのは「考えてあげる」であって、「土下座したら許す」とは言っていない。森川茉莉が土下座しても、結局は辞めさせるつもりだった。
皆が森川茉莉を見つめ、彼女がプライドを捨てるかどうか見守っていた。
森川茉莉の顔は赤くなったり青くなったりしたが、もう逃げ場はないと悟っていた。
膝が崩れ、今にもその場で土下座しそうになった。
だが、突然誰かに腕をつかまれた。振り返ると、そこには高橋美咲が立っていた。
「高橋取締役?」森川茉莉は驚きの表情を浮かべた。
高橋美咲はちょうどトイレに行っていて、ここでこんな大事が起きているとは知らなかった。出てきて初めて、部下が柳小路とトラブルになったと知り、急いで駆けつけたのだ。
まさか森川茉莉が柳小路に土下座して許しを請おうとしているとは思いもしなかった。
高橋美咲は自分の部下を守るタイプ。自分の下の者に頭を下げさせるなんて、絶対に許せない。
加藤千尋は高橋美咲を見るなり、また前に出て遠慮なく言い放った。「高橋美咲、ちょうどいいところに来たわ!あなたの部下が柳小路さんの下書きを台無しにしたの。直属の上司として、責任取るべきじゃない?」
そこで一度言葉を切り、意地悪そうに笑った。「いっそ……あなたも辞めたら?」
加藤千尋はデザイナーで、柳小路が今後マネージャーになると思い込んでいた。
もし高橋美咲もいなくなれば、デザイン部長の座が自分のものになるかもしれない。
だからこの機会にわざと高橋美咲をターゲットにしたのだ。
もし本当にうまくいけば最高だと思っていた。
見物していたスタッフたちは、高橋美咲が現れるとすぐにひそひそと噂し始めた。
「高橋美咲が来た。前はあんな肩書きが明かされたから、メゾン・ヴェルヌで幅を利かせるのかと思ったけど、まさか柳小路が社長夫人になるなんて。」
「結局、高橋美咲も大したことないね。どんなにQueenがすごくても、社長夫人には勝てないでしょ?」
「まあそうだけど、高橋美咲は本当に素直に辞めるのかな?」
高橋美咲の耳は良く、周囲のひそひそ話がしっかり聞こえていた。
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