Chapter 386
彼が九条蓮なのか
九条蓮と九条凛が階段を下りてきた。
九条凛は急いで九条家のお母様のそばに駆け寄り、「美咲はとっくに悠真お兄ちゃんの本性を見抜いてるよ。戻るわけないから、心配しなくて大丈夫」と言った。
その言葉を聞いて、九条家のお母様もようやく少し安心した。
ちょうどその時、九条蓮の携帯が鳴った。取り出して画面を見ると、水城圭介からだった。「九条社長、本日の会議は午後3時からです。今からお越しいただけます。」
最近、真壁直人の母親が体調を崩し、1ヶ月ほど実家に帰省していた。その間の業務はすべて水城圭介が担当していた。
九条蓮は低い声で「うん」と返事をした。
通話を終えると、九条家のお父様とお母様に「急ぎの用事があるので、先に会社へ戻ります」と伝えた。
「明日は必ずお嫁さんを連れてきてね。新居祝いなんだから。」
九条蓮の車がゆっくりと九条家本邸を離れていった。車が見えなくなった頃、九条悠真と九条沙耶香が物陰から姿を現した。
「やっぱり本人だ!」
九条沙耶香も不安げに「本当に九条蓮なのかな?」とつぶやいた。
「まだ確信はないけど、どうも引っかかるんだ」と九条悠真は答えた。
一番の理由は、九条蓮の存在感が強すぎることだった。もしもっと冴えない、みすぼらしい、平凡な男だったら、疑うこともなかっただろう。
だが九条蓮はあまりにも際立っていて、どうしても疑念が湧いてしまう。
イケメンか、本物の九条蓮か、どちらかしかない!
九条悠真は「徹底的に調べてやる!」と決意した。
九条沙耶香は、これまで九条蓮に言ったことやしてきたことを思い出し、もし本当に彼が九条蓮だったら、自分たちは終わりだと青ざめた。
どうか全部、ただの思い違いであってほしいと願った。
今日は連休の最終日だった。
高橋美咲は、どうやって過ごそうかと考えていたところ、朝早くから九条凛が訪ねてきた。
九条凛は部屋に入ってソファに座ると、意味ありげな笑みを浮かべて「美咲、やっと目が覚めて戻ってきたんだね?」と言った。
高橋美咲は少し頬を赤らめた。親友の前とはいえ、やはり恥ずかしい。だが、九条凛がその照れた様子を見て、これ以上からかうことはなかった。
その後、九条凛は家で美咲とおしゃべりをして過ごした。
九条凛はよく美咲に会いに来ていたが、今日はどこか様子が違うと高橋美咲は感じていた。さっき美咲が「一緒に買い物に行こう」と誘った時も、九条凛は「今日は気分じゃない」と断った。
高橋美咲が「何かあったの?」と聞こうとしたその時、九条蓮が帰ってきた。九条蓮は九条凛に軽く視線を送り、「お嬢様」と呼びかけると、九条凛は笑顔で立ち上がった。
「仕事じゃなかったの?」と高橋美咲は不思議そうに九条蓮を見た。
九条蓮は部屋に入り、「両親が引っ越すから、一緒に食事に来てほしいって」と言った。
「引っ越し?」
高橋美咲はふと、九条家のお父様とお母様の以前の家を思い出した。少し狭いとはいえ、十分立派だったはず。なぜ急に引っ越すのだろう?
高橋美咲の疑問に気づいたのか、九条蓮は「もう長いこと住んでなかったし、何もかも気に入らなくなったみたい」と説明した。
そうか……と高橋美咲は納得し、それ以上は深く考えなかった。
ただ、九条凛に少し申し訳なさそうな視線を向けた。
せっかく今日は九条凛が遊びに来てくれたのに、九条蓮と食事に行くことになってしまう。今さら九条凛を帰らせるのも気が引ける。
九条凛はにっこり笑って「引っ越しの手伝いに行くの?私も行く!叔父さんも叔母さんも他人じゃないし、久しぶりに会いたいし」と言った。
高橋美咲は困惑した。九条凛の記憶力、そんなに悪かったっけ?
つい最近会ったばかりじゃなかった?
実は、九条凛が今日高橋美咲に会いに来たのは、自然な流れで一緒に食事に行くためだった。自分から「行きたい」と言えば、美咲も断らないだろう。
案の定、高橋美咲は反対せず、ただ九条蓮の方を見て「凛も一緒でいい?」と尋ねた。
You might also like




