Chapter 365
桜井奈緒は高橋家の令嬢じゃない
高橋正人の冷たい視線が桜井奈緒に向けられ、ゆっくりと彼女の正体を明かした。「彼女は、私の家に仕えていた使用人・方おばさんの娘だ。」
九条沙耶香と九条悠真は、その言葉に再び打ちのめされた。
使用人の……娘?
しばらくの間、場は静まり返った。周囲の人々も衝撃を受けているのが明らかだった。
一体どういうことなのか?
九条悠真は高橋家の婿になるはずではなかったのか?だが今の高橋正人の話では、何か裏があるようだ。
九条悠真が結婚しようとしていた相手は、本当は高橋家の令嬢ではなかったのか?
九条沙耶香は険しい目つきで桜井奈緒を睨みつけ、甲高い声で問い詰めた。「桜井奈緒!あなた、高橋家の令嬢だって私に言ったわよね?」
桜井奈緒はすでに呆然とし、どう反応していいか分からなかった。
全身が震え、悔し涙が頬を伝い、か細い声で哀れっぽく言った。「お義母様、私……私が言っていた高橋家は、この高橋家じゃなかったんです。誤解されるなんて思ってなくて……」
九条沙耶香の目はさらに厳しくなり、今にも桜井奈緒をその場で絞め殺しそうな勢いだった。
彼女……彼女はよくも騙してくれた!
確かに大阪の高橋家の娘だと言っていたのに、今さら違う高橋家だなんて。全部こちらの勘違いだと言いたいのか?彼女の言葉がなければ、誰がそんな風に思うものか。
九条沙耶香は鼻で笑った。「つまり、全部私たちのせい?私たちが勝手に誤解したとでも?」
桜井奈緒は必死に首を振った。「違います、違います、私が悪いんです……」
この突然の展開に、招待客たちは皆呆然とし、やがて我に返ると小声で集まってひそひそ話し始めた。
「うそでしょ!信じられない。怖すぎる……」
「こんなことってある?」
一番嬉しそうに笑っていたのは近藤夫人で、すぐさま皮肉たっぷりに追い打ちをかけた。
「ぷっ……笑い死にしそう!てっきり悠真くんがすごい令嬢を見つけたのかと思ったら、よくもまあそんな嘘をついたものね。今ごろ大恥かいてるわ。」
「桜井奈緒は高橋家の令嬢じゃないんだって。九条悠真は偽物の鳳凰を掴まされたの?」
「さっきはうちの息子に令嬢を紹介するって言ってたけど、まさか偽物の令嬢じゃないでしょうね。うちの子にはいらないから、悠真くんにでも取っておいてあげて。」
「あの新規プロジェクトもこれで終わりね。笑っちゃう!」
……
近藤夫人の一言一言が九条沙耶香の心に突き刺さり、顔色はみるみる青ざめ、全身が震え出した。それが怒りなのか、悔しさなのかも分からないほどだった。
桜井奈緒は心が完全に死んだような気分だった。もう終わりだと悟った。
高橋家の令嬢という身分が隠しきれなくなった今、九条悠真は自分と結婚してくれるのだろうか?
九条悠真は目を赤くし、桜井奈緒をじっと見つめていた。まさか桜井奈緒が高橋家の令嬢でなかったとは。最初から最後まで騙されていたのか?
夢が打ち砕かれた絶望が一気に押し寄せ、彼は苛立ちと怒りでいっぱいになった。
ちょうどその時、九条悠真の携帯が再び鳴った。
苛立ちながら取り出して画面を見ると、知らない番号から動画が送られてきていた。それを開いた瞬間、さらに怒りがこみ上げた。
その動画は柏木健人から送られてきたもので、彼と桜井奈緒の明らかな情事の映像だった。
以前のものに加え、2日前のものまであった。
桜井奈緒は半ば嫌がる素振りを見せつつも、まったく拒否の様子はなく、後半は自分から柏木健人に積極的に迫っていた。大胆そのものだった!
婚約していた当時、桜井奈緒は高橋美咲がAIで自分の顔を合成したと言っていた。その時は桜井奈緒が高橋家の令嬢だと信じていたから、深く追及せず、彼女の言葉を信じてしまったのだった。
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