Chapter 354
どうして高橋美咲なのか
その時、突然場違いな嘲笑混じりの声が響いた。
「高橋美咲なわけないでしょ。あいつがどんなクズか、私が一番よく知ってるんだから!」
数人が振り返ると、柳小路が腕を組んで立っており、顔にはあからさまな軽蔑と不満が浮かんでいた。
ちょうどその時、高橋美咲と森川茉莉が舞台裏から出てきて、柳小路の言葉を耳にした。森川茉莉はすぐに反論せずにはいられなかった。
「高橋取締役のどこがクズなんですか?それにあなたはそんなに偉いんですか?高橋取締役のことをそんなふうに言う資格があるんですか?地位だって高橋取締役の方が上でしょ!」
柳小路は目をむいて「どうせコネで入っただけでしょ。何を偉そうにしてるの?」と吐き捨てた。
そのうち九条社長とくっつけば、どうせ高橋美咲の上に立てるはずだし!
高橋美咲は柳小路のことなど全く気にしていなかった。柳小路が自分を嫌っているくせに何もできない、その様子が一番おかしかった。
柳小路はまだ引き下がらず、鼻で笑いながら冷たく皮肉を言った。「高橋美咲、実はビビってるんでしょ?強がってるけど、本当はQueenにスポットライトを奪われるのが怖くて、目を見開いてここに出てきたんでしょ。」
高橋美咲はそれを聞いて、冷たく笑った。「実は、けっこう怖いよ。」
柳小路は思わず得意げな笑みを浮かべた。まさか高橋美咲が認めるとは思っていなかったのだ。
ところが高橋美咲は口元を皮肉っぽく歪め、意味深な笑みで言った。「小さい頃、犬に噛まれて狂犬病の注射を打たなかったんだ。だから、あなたみたいな人は確かに怖いよ。」
高橋グループにいた頃から、柳小路はいつも彼女に突っかかってきて、あらゆる手で嫌がらせをしてきた。まさか九条インターナショナルに来ても、柳小路は相変わらずで、今度はQueenを使ってまで彼女を揶揄するとは思わなかった。
仮にQueenが現れて自分の立場を奪ったとしても、柳小路に何の得があるというのだろう。
「あんた!」柳小路は怒りで全身を震わせ、顔色もひどく悪かった。
高橋美咲はバカと張り合う気もなく、桜井奈緒の方を見て、このQueenとやらが誰なのか気になっていた。
この時、メゾン・ヴェルヌのデザイナーたちも皆集まり、桜井奈緒の答えを待っていた。
桜井奈緒は高橋美咲の姿を見つけると、目に得意げな光を浮かべ、口元に冷たい笑みを浮かべた。
そして困ったような表情で「仕方ありませんね、そんなに知りたいなら、もう隠しません。実はQueenはうちのメゾン・ヴェルヌの取締役、高橋美咲なんです!あそこにいますよ!」と発表した。
言い終わると、桜井奈緒は親しげに高橋美咲に手を振った。「美咲さん、早くこちらに来て記者の皆さんにご挨拶を。皆さん、ずっとお待ちかねですよ。」
皆の視線が一斉に高橋美咲に向けられた。
一瞬にして、高橋美咲は全員の注目の的となった!
多くの人が驚きの表情を浮かべ、高橋正人や九条悠真までもが桜井奈緒の方を見やった。
特に柳小路は目を見開き、信じられないという顔で呆然としていた。
高橋美咲がQueenだったなんて——
そんなはずない!
普段から高橋美咲と同じ会社で働いているデザイナーたちは、みんな口をぽかんと開けて、あまりの衝撃に言葉も出なかった。
しばらくしてから、誰かがぽつりとつぶやいた。「うそでしょ、夢でも見てるのかな?高橋美咲がQueen?伝説がずっと身近にいたなんて?」
「夢じゃないよ!さっき思いっきり自分をつねったけど、めちゃくちゃ痛かったから、高橋美咲は本当にQueenだ!」
「本当に控えめすぎるよね。サインもらいに行きたい!」
森川茉莉はショックで口を手で覆い、高橋美咲を信じられないという目で見つめ、怯えたようにどもりながら言った。「た、高橋取締役、あ、あなたが……あのQueenなんですか?」
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