Chapter 353
これ以上は演じきれない(続き)
しかし……
九条悠真は視界の端に、さっきからずっと自分たちに付きまとう男を捉え、きつく眉を寄せた。このヒモの美男子は、一体何のためにずっと張り付いているのだ?
高橋正人が自分を助けてくれるとでも思っているのか?
ずいぶん自分を買いかぶったものだ。笑わせる!
九条悠真の懸念は現実になった。高橋正人は本当に、会場にいる富裕層の人々と、九条蓮を交えて丁寧に歓談していた。九条悠真は目が赤くなるほど腹を立て、今すぐこの憎らしい運転手を外へ放り出したかった。
その頃、桜井奈緒は会場の隅に立っていた。
暗い目で高橋正人と九条悠真の方を見つめている。さっきはショーがあったため二人は話せなかったが、これからはそうはいかない。高橋正人と九条悠真が話せば、自分の正体はいつ露見してもおかしくなかった。
どうしよう?今、どうすればいいの?!
桜井奈緒はすぐに歯を食いしばった。幸い、予備の策は用意してある。あの三木雅人さんが今どこまで来ているのかだけが分からなかった。
彼女は陽子を人目の少ない場所へ引っ張り、低い声で問い詰めた。「三木雅人さんが来るって言ったよね?今、どこにいるの?」
陽子は申し訳なさそうに言った。「さっき三木雅人さんから電話がありました。用事で遅れたけど、もうすぐ着くそうです」
それを聞き、桜井奈緒の顔の緊張がわずかに和らいだ。
彼女はそっと口元を上げ、命じた。「今すぐ記者を全員集めて。Queenについて発表があると伝えるの」
「分かりました。すぐ手配します」
陽子が去ると、桜井奈緒の笑みはいっそう深まった。まず高橋美咲がQueenだと発表し、それから三木雅人さんに彼女の正体を暴かせる。
そうなれば、全員の注目が高橋美咲に集まり、自分が高橋家の娘を装っていることが暴かれる心配はなくなる。
高橋美咲、高橋美咲――あなたがあまりにも目障りなのがいけないのよ。だから私の盾になってもらうわ!
メゾン・ヴェルヌの新作発表会はすでに終了し、多くの人々の関心は完全にQueenに移っていた。
パールの記者たちもQueenの写真を撮って独占記事にしようと狙っていた。
陽子が桜井奈緒がQueenについて発表する予定だと伝えると、記者たちは一斉に桜井奈緒のもとへ殺到した。
あっという間に桜井奈緒は記者たちに水も漏らさぬほど取り囲まれた。
四方八方から次々と質問が飛び交う。
「桜井部長、さっきあなたのアシスタントがQueenについて発表があると言っていましたが、Queenの正体を教えてくれるんですか?ずっと待ってたんですよ!」
「そうですよ、早く教えてください!Queenって誰なんですか?」
「待ちくたびれて髪が真っ白になっちゃいましたよ。」
桜井奈緒は口元にうっすらと微笑みを浮かべ、穏やかに言った。「皆さん、焦らないでください。Queenについてお話しします。実はQueenはうちのメゾン・ヴェルヌの社員なんです。」
皆は驚き、すぐに「本当ですか?じゃあQueenって一体誰なんですか?」と詰め寄った。
隅の方では、メゾン・ヴェルヌのデザイナーたちも桜井奈緒の方を熱心に見つめ、小声でささやき合っていた。
「今になって急に気になってきたよ。このQueenって本当に謎だよな。最後まで姿を見せなかったし、ショーが終わったら出てくると思ってたのに。」
「桜井部長がQueenはうちの会社にいるって言ってたけど、もしかして私たちの中に匿名で紛れてたのかな?」
「それはさすがにないでしょ?誰がQueenなのか全然見当つかないし。」
「もし該当者がいるとしたら、高橋美咲じゃない?だって皇彩堂アカデミー卒業だし、Queenのイメージにぴったりだよ。」
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