Chapter 349
私を振ったのは美咲の方
「雰囲気が良すぎる。どこかの資産家の御曹司かしら?」
周囲の人々は九条蓮を値踏みしながら、興奮と憧れを隠しきれずにひそひそと囁き合っていた。
何しろ九条蓮はとびきりの美形だ。ただそこに立っているだけで、何人もの女性の心を奪ってしまう。
そんな中、桜井奈緒と柳小路だけは、表情が次々と変わっていた。
そして少し離れた場所にいた佐伯葉月も、顔色がさっと曇った。
一体どういうこと?
なぜ九条蓮が高橋美咲を追いかけているの?
佐伯大輔は、最近九条蓮が九条家の大旦那様を怒らせたことを知っていた。そのせいで九条家の大旦那様が自分の元に縁談を持ち込んできたのだ。
もしかしたら、それも高橋美咲が原因かもしれない。
彼は佐伯葉月の手の甲を軽く叩き、低い声で言った。「葉月、あの女は九条家の大旦那様のお眼鏡にかなわなかったからこそ、うちに話が来たんだ。正統なお嬢様である君こそ、九条蓮にふさわしい。あんな女、気にする必要はないよ。」
その言葉を聞いて、佐伯葉月は徐々に落ち着きを取り戻した。
そうだ。九条蓮のような非の打ち所のない男性なら、女性が一人や二人いてもおかしくない。自分は正妻としての品格を持っていればいい。最終的に九条家の奥様の座を手に入れれば、それで十分だ。
高橋美咲のような女、相手にする価値もない。
森川茉莉は、現れたのが前に見たイケメンではなく、見知らぬほどの美男子だったことに興味津々だったが、この男の方が前に見た人よりもはるかに格好良いと感じていた。
柳小路たちに見下される心配なんて、これっぽっちもない!
こんな絶好のチャンス、森川茉莉が見逃すはずがない。彼女は柳小路に向かって言った。「さっき誰かが、高橋取締役の追っかけがイケメンだったら、みんなの前で土下座して謝るって言ってなかった?ほら、超イケメンが来たんだから、早く土下座しなよ!」
九条蓮の容姿には、まったく非の打ちどころがない。
粗を探そうにも、見つかりっこない。
森川茉莉の皮肉混じりの言葉に、柳小路の顔は青ざめたり真っ白になったり。彼女は九条蓮を悔しそうに睨みつけ、内心で歯ぎしりしていた。
イケメンだからって何?どうせ高橋美咲は捨てられたんでしょ?
彼女は悪意たっぷりに言った。「あなた、高橋美咲と遊び飽きて捨てたんですか?さっき呼んだのは、二人の仲を取り持とうと思っただけなんです。」
そう言い終えると、柳小路は九条蓮が高橋美咲に興味がなくなったと認めるのを待った。
高橋美咲「……」
柳小路、まだ恥ずかしくないの?
九条蓮はゆっくりと口元をほころばせ、傷ついたような表情を作って言った。「実は、僕が美咲に振られたんです。その後、ずっと追いかけて、やっと付き合ってもらえました。」
「えっ!」柳小路は驚きの声を上げ、信じられないといった様子で言った。「彼女があなたを振ったの?!」
こんなに完璧なイケメンが自分から高橋美咲を追いかけて、しかも振られたなんて——そんなこと、あり得るの?
森川茉莉はそれを聞いて、思わず冷笑を漏らした。
彼女は柳小路を見て鼻で笑い、「柳小路、もう騒ぐのやめなよ。高橋取締役が優秀なの、認めるのそんなに悔しい?このイケメンに追いかけられる価値、十分あるでしょ!」
周囲の人たちも、流れが変わったのを見て次々と態度を変え始めた。
「高橋美咲って本当に優秀だよね。有名な名門校出身らしいし。」
「あれだけ優秀なら、イケメンに追われても全然不思議じゃないよ。誰が追っかけがブサイクなんてデマ流したの?性格悪すぎ!」
「柳小路でしょ?さっきまでみんなをミスリードしてたの、あの人だよ。」
「じゃあ、今まさに盛大に自爆したってこと?めっちゃ恥ずかしいじゃん。」
……
周囲のひそひそ話が耳に入るたび、柳小路の顔は土気色になり、怒りで胸が詰まって今にも爆発しそうだった。
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