Chapter 345
高橋美咲の求婚者
「高橋美咲、振られたんだって。どうりで数日前に仕事中ぼんやりしてたわけだ。夜更かししてドラマでも見てたのかと思ってた」
「男なんてそんなもんよ。手に入れたら大事にしなくなる」
「高橋美咲、可哀想すぎる。あんなに大騒ぎしてアプローチされてたのに、結局こんな終わり方。そりゃ贈り物も来なくなるわけだ」
柳小路の言葉を聞き、高橋美咲の目がほんの少し陰った。
柳小路が言っているのは、少し前に九条蓮と喧嘩したあの時のことだろうか?
どうして彼女がそれを知っているのだろう?
その時、柳小路の目に計算高い光がよぎり、急に親切そうな口調で言った。「あ、そうだ、高橋美咲の彼氏の電話番号、私持ってるの。今ここで呼び出して、高橋美咲のために一言お願いしてあげようか?このままだと可哀想だし。高橋美咲、ここ数日ご飯も喉を通らないくらい落ち込んでるんだって!」
高橋美咲は眉をひそめた。
柳小路が九条蓮の電話番号を持っている?どこで手に入れたの?
高橋美咲がまだ考え込んでいると、森川茉莉の顔が一瞬で青ざめ、慌てて言った。「高橋取締役、ごめんなさい!私のせいです。あの日、お花に付いてたカードを捨ててって言われたのに、柳小路さんに奪われちゃって…」
その時はただのカードだと思って、深く考えずにいた。まさか柳小路がそのカードの番号を使って高橋美咲の彼氏の電話番号を手に入れるなんて思いもしなかった。
もし今ここで電話をかけられたら、高橋美咲はきっと恥をかかされてしまう。
「高橋取締役、本当にごめんなさい…」
森川茉莉は考えれば考えるほど罪悪感が募り、自分が高橋美咲を傷つけてしまったように感じていた。
それを聞いた桜井奈緒は、口元に薄い笑みを浮かべ、柳小路を止めるどころか、むしろ優しく言った。「感情的になって喧嘩しちゃうのはよくないわよね。高橋さんも本当はすごく大事に思ってるんだと思うし、ちゃんと話せばきっと大丈夫よね?」
柳小路は嘲るように笑いながら、高橋美咲の彼氏の番号に電話をかけ、しかもスピーカーモードにした!
一体どんな男が高橋美咲を追いかけていたのか、見てやろうと思ったのだ。
もし電話口で怒鳴り散らされたり、相手が腹の出たおじさんだったりしたら、それこそ笑いものだ。
高橋美咲は眉をぎゅっと寄せた。
柳小路が本当に九条蓮の番号を手に入れていたとしても、絶対に九条蓮をここに呼び出して、皆の前で笑いものにさせるわけにはいかない。高橋美咲は冷たく言った。「柳小路、これは私のプライベートなことよ。余計なことしないで」
「あら、余計なお世話が一番好きなのよ!」
そう言い終わるや否や、柳小路はすでに発信ボタンを押していた。
その場にいた多くの人が注目し始めた。この間、九条悠真も高橋美咲を追いかけている男がいることに気づいていて、神谷海斗ではないかと疑っていたが、これでようやく自分の推測が確信に変わった。
周囲のざわめきが一気に静まり、柳小路の携帯から流れる音がはっきりと聞こえた。
プルルル、プルルル……
なかなか電話はつながらなかった。皆ががっかりしかけたその時、ようやく通話がつながり、低く心地よい声が電話越しに響いた。「もしもし」
……
十五分前、九条蓮はホテルの応接室にいた。
真壁直人が入ってきて言った。「九条さん、高橋正人がプライベートジェットで東京に向かい、今ホテルに向かっているとの連絡が入りました」
九条蓮はしばらく黙った後、「来たか。案内してくれ」と言った。
「かしこまりました」
義父に会うつもりだったが、親しくなるためではない。
桜井奈緒が高橋家の令嬢として九条インターナショナルのメゾン・ヴェルヌ・ジュエリーのマネージャーになれたのは、高橋家の協力が不可欠だった。
You might also like




