Chapter 328
今度は私が動く番(続き)
あの日九条家軽井沢別邸を出てから、高橋美咲はずっと九条家軽井沢別邸のオーナーが誰なのか調べようとしていた。
だが、その人物は本当に謎めいていて、どんなに調べても手がかり一つ掴めなかった。
幸いなことに、この二日間は九条蓮も会いに来なかった。高橋美咲は毎日気が気でなく、首元の痕を隠すためにハイネックの服を着て、バレるのを恐れていた。
ようやく、体の痕も徐々に薄れ、目立たなくなってきて、ようやく心が落ち着いた。
今日は、九条蓮が与えた期限の三日目だった。
彼女はますます不安になっていた。どうしたらいいのか分からず、九条蓮にバレるのが怖かった。
何事にも動じない高橋美咲が、今までにないほどオストリッチのように現実から目を背けていた。
……
東京、佐伯家の自宅。
佐伯大輔と佐伯夫人がソファに座っていた。
ちょうど佐伯葉月が外から帰ってきて、二人を見てソファの前に腰を下ろした。
「お母さん、お父さん、二人でお茶なんて珍しいね?」
佐伯葉月の言葉に、佐伯夫人はどこか意味ありげに微笑んだ。「葉月、あなたももう若くないんだから、そろそろ釣り合いの取れるいい男性を見つけて結婚しなきゃって、お父さんと二人であなたの将来の結婚について話してたのよ!」
それを聞いて、佐伯葉月は驚いた表情を見せた。
すぐに、「誰を選んだの?」と詰め寄った。
佐伯葉月は、彼女たちのような名家のお嬢様にとって、結婚のような大事なことは自分で決められないのが普通だと知っていた。結局は政略結婚になるのだ。
数日前のあのプライベートな集まりの前だったら、家の言う通りに従っていたかもしれない。でも、あの胸を打つ男性に出会ってからは、心が彼のもとに残ってしまったことに気づいた。
他の誰かと政略結婚するのは、どうしても納得がいかなかった。
佐伯葉月の顔に明らかな抵抗の色が浮かんでいるのを見て、佐伯大輔は低い声で言った。「普段はわがままでもいいが、今回はこの縁談を受けてもらう。佐伯家にとって非常に重要なんだ。」
昨日、大阪の九条家の大旦那様から突然連絡があり、九条蓮のために釣り合いの取れる女性を探して縁談を進めたいと言われたのだ。
大阪と東京は距離があるとはいえ、九条蓮の東京での事業も決して侮れない。
しかも、九条蓮と何度か会ってみて、話し方から何から何まで非の打ち所がないと感じていた。間違いなく多くのお嬢様たちが彼との縁談を望んでいるはずだ。この機会を逃すわけにはいかない!
佐伯葉月は少し不満げに言った。「お父さん、そんなに断言しなくてもいいじゃない。相手は誰なの?本当にそんなにすごい人なの?」
佐伯葉月が納得していないのを見て、佐伯大輔は厳しい口調で言った。「九条社長だ、九条蓮。お前にもよく話しているだろう!」
佐伯夫人も横から口を挟んだ。「そうよ葉月。九条家に嫁ぎたい人なんて山ほどいるのよ。このチャンスを逃したら、もう二度とないわ!」
縁談の相手がまさか九条蓮だと聞いた瞬間、佐伯葉月の顔から抵抗の色が一気に消えた。
瞳がわずかに揺れ、すぐに背筋を伸ばして座り直した。
「お父さん、お母さん、本当に?本当に九条社長なの?」
二人は、佐伯葉月が九条蓮だと知れば絶対に反対しないと分かっていたので、すぐに「もちろん本当よ。大阪の九条家の大旦那様が直々に連絡してきたの。これが決まれば、九条家の未来の奥様はあなたよ」と言った。
それを聞いて、佐伯葉月の目に期待の色が浮かんだ。
あの日、九条凛の親友がトラブルに巻き込まれたとき、ほとんど面識もない相手なのに、九条蓮は九条凛のためにすぐに助けに入った。その決断力と冷静さ、そしてどこか距離を感じさせる態度には抗いがたい魅力があった。
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