Chapter 319
俺が誰かわかるか
美咲はすでに意識を失っていたが、赤い唇から無意識に三つの言葉がこぼれた。「蓮……九条蓮……」
おそらく最後の一瞬、意識が途切れる直前まで、美咲の心にいたのは九条蓮で、彼に助けてほしいと願っていたのだろう。
美咲が甘く柔らかな声で自分の名を呼ぶのを聞き、九条蓮の瞳孔がきゅっと縮まった。
もともと美咲と相沢翔のことがあったから、彼はずっと自制してきた。無理やり彼女を抱くこともしたくなかったし、後悔させるのも怖かった。そうでなければ、あの日すでに彼女を自分のものにしていたはずだ。
だが今や美咲と相沢翔の関係の真実を知った以上、もう何も迷う理由はなかった。美咲はずっと自分の妻だった。この機会に、今度こそ本当に自分のものにする。
九条蓮は顔を伏せて美咲の唇にキスをした。大きな手で彼女の頭を支え、もう一方の手で最後の衣服を脱がせた。
美咲はすでに彼の下で力が抜け、水のように柔らかくなり、ただされるがままに九条蓮にすべてを委ねた。
部屋中が熱く激しい親密さに包まれた。
どれほどの時が流れたのか誰にもわからない。九条蓮は手早くシャワーを浴び、美咲の体もきれいにしてから、柔らかなベッドに寝かせた。
その頃には美咲の体の症状もすでに落ち着いていた。ベッドで静かに横たわりながらも、繊細な眉はわずかにひそめられ、眠りは浅そうだった。
九条蓮はスーツに着替え、いつもの冷静で抑制の効いた雰囲気を取り戻した。
美咲を見つめる目には、どこか温かさが宿っていた。彼がここまで自制を失ったのは初めてだった。
どうやら美咲をかなりひどく苛めてしまったらしい。
何かを思い出したように、九条蓮の整った顔に恐ろしいほどの冷酷さが浮かび、表情が再び厳しくなった。
部屋を出る前にもう一度美咲を見やり、ドアを閉めて出て行った。
自分の女に手を出した者には、必ずその報いを受けさせる。
神谷海斗と九条凛は、別の部屋で待っていた。二人は暇を持て余し、トランプを始めていた。
ドアが開く音がして、二人は同時に顔を上げて入口を見た。
九条蓮が長い脚で颯爽と入ってきた。白いシャツに黒のスラックス姿はいつも通り上品で気品があったが、髪はまだ少し濡れていて、どこか退廃的な色気も漂わせていた。
神谷海斗がぼそっとつぶやいた。「三時間もかかったな。やるじゃん。」
九条蓮は神谷を横目で睨み、それだけで神谷は素直に口をつぐんだ。
実際、一度だけでは済まなかった。美咲があまりにも魅力的すぎたからだ。
もしこれから片付けるべき相手がいなければ、彼はまだ離れたくなかった。
神谷は軽く咳払いし、「じゃあ、これから高橋さんに手を出した連中を片付けるんだな?もう調べておいたよ。お前の専属運転手の娘、名前は……」
九条凛の顔に怒りが走った。拳を握りしめ、歯を食いしばって言った。「森川佳鈴よ!兄さん、あの女が美咲に薬を盛って、さらに二人の男に襲わせようとしたの。」
「聞いた?あの女、全部終わった後で、東京中の社交界の人たちを呼んで見せ物にしようとしてたんだって。その頃には美咲は完全に潰されて、もうこの辺りじゃ顔も出せなくなるって。本当に最低!」
森川佳鈴のやったことを思い出すだけで、九条凛は今にもあの女をバラバラにしてやりたい気持ちだった。兄に任せると決めていなければ、とっくに自分でケリをつけていたはずだ。
義姉に手を出そうとするなんて、絶対に許せない!
「連れてこい」九条蓮が低い声で命じた。
突然、黒服の屈強なボディガードたちが大勢で宴会場に押し入り、社交界の面々は皆驚き、何が起きたのか分からずにいた。
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