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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 312 - 歯が砕けそうなほどの悔しさ

Chapter 312

歯が砕けそうなほどの悔しさ

森川佳鈴は追い出されはしなかったが、誰も彼女に近づこうとしなかった。みんな彼女のことを不吉で、関わりたくない存在だと思っていた。

本物の九条凛が現れた今、当然みんなは九条凛に群がり、森川佳鈴に目を向ける者はいなかった。

結局、森川佳鈴は隅の席に座るしかなく、高橋美咲と九条凛が令嬢たちに囲まれて輝いているのを、惨めな気持ちで見つめていた。

彼女の目には憎しみが浮かび、歯を食いしばりすぎて今にも砕けそうだった。

くそっ!

高橋美咲は昨日わざと来なかったくせに、今日になって九条凛を連れてきて自分を晒し者にしたんだ。

あの女は本当に陰険だ。兄の九条悠真まで奪った上に、自分の将来まで潰した。今日みたいなチャンスは、本来なら自分が上流社会に入る絶好の機会だったのに。

今や全てが水の泡。こんなの、どうして受け入れられる?

このまま高橋美咲の好き勝手を黙って見ていろというの?

森川佳鈴の目に狂気じみた決意がよぎり、何かを思いついたように冷たい笑みを浮かべて立ち上がり、外へと歩き出した。

その頃、九条家軽井沢別邸の最上階の一室。

九条蓮はバーカウンターに座っていた。薄暗い照明の中、その端正な顔立ちはどこか神秘的な気品を漂わせていた。

九条蓮は九条家軽井沢別邸のオーナーで、ここには年代物の上質な酒が揃っている。下の宴会場は一般にも開放されているが、上階のプライベートエリアは彼のものだ。

九条蓮は暇な時、親しい友人とここで酒を飲みながらくつろぐことが多い。

今日はたまたま神谷海斗と一緒にここで飲んでいた。

隣のソファには神谷海斗がだらしなくもたれかかっていた。

彼は九条蓮をちらりと見て、「それで、あっさり告白したの?高橋さんの反応は?OKしてくれた?」と尋ねた。

九条蓮は淡々と目を上げた。「いや。」

神谷海斗は鼻で笑い、少し意地悪そうに言った。「信じられないな。九条インターナショナルの社長が女の子に告白して、断られるなんて。」

「他の女なら、きっとキャーって抱きついてくるのに。やっぱり高橋さんは普通の女じゃないんだな。」

九条蓮はグラスを手に取り、一口飲んで目を細めた。

彼は、相沢翔がまだ高橋美咲と自分の間にいることを知っていた。もしかしたら、そのせいで彼女は迷っているのかもしれない。

彼は自分にあと半年だけ猶予を与えると決めていた。

今度こそ、簡単には諦めない。

何かを思い出したように、神谷海斗が話題を変えた。「今、下でプライベートパーティーやってるよな。東京からも令嬢がたくさん来てるって聞いたぜ。高橋さんは諦めて、下に行って誰か選んだらどうだ?」

九条蓮は低い声で言った。「余計な世話だ。気に入ったならお前が選べばいい。でも、俺の妹には二度と手を出すなよ。」

神谷海斗は、ただからかっていただけだった。

だがそう言われて、すぐに口をつぐみ、大人しくなった。

彼は慌てて話題を変えた。「お前は他の女に興味ないかもしれないけど、お前の甥っ子は違うぞ。今、下で女の子を口説いてる。」

九条悠真は桜井奈緒と結婚する予定だが、三つ子の魂百までというか……

桜井奈緒に隠れて別邸に来て、他の女といちゃついていた。神谷海斗がさっき入ってきた時、九条悠真が女を抱いてイチャイチャしているのを見かけたのだ。

考え直してみても、やはり一言忠告しておくべきだと感じた。

それを聞いても、九条蓮は特に反応を見せなかった。

九条家には多くの人間がいるが、全員が潔白というわけではない。九条悠真のように家の名前を頼りにして、毎日夢見がちな放蕩息子も少なくなかった。

これ以上首を突っ込むつもりはなかった。幸い、高橋美咲は早い段階で彼の元を離れていた。

その時、ドアをノックする音がして、外から真壁直人の声が聞こえた。「九条社長、相沢翔さんがお会いしたいそうです。」

相沢翔の名前が出ると、九条蓮の目がゆっくりと細くなった。

「通してくれ。」