Chapter 305
森川佳鈴のもとへ行ったのは間違いだった
「美咲、ちょっと待って、電話切らないで……」九条凛がそう言うと、電話の向こうは静かになった。
高橋美咲は五分ほど辛抱強く待った。
しばらくして、九条凛の声が電話越しに再び聞こえてきた。少し興奮した様子で「美咲、明日空いてる?一緒に行きたいところがあるの。」
九条凛に頼まれて、高橋美咲が断るはずがない。
「明日は日曜だし、もちろん空いてるよ。」
「よかった。じゃあ明日迎えに行くね。」
電話を切った後、九条凛は歯を食いしばり、顔には悔しさがにじんでいた。
さっきメイドに聞いたら、あの女子会の招待状が跡形もなく消えていた。あちこち探して、九条家の大奥様に聞いてみたら、なんと森川佳鈴に渡していたのだ!
なぜ森川佳鈴に渡したのか問い詰めると、大奥様は特に問題だと思っていない様子で、「凛はああいう集まり好きじゃないでしょ?森川さんに行かせて見聞を広めさせてあげたらいいじゃない」とまで言う始末。
本当に腹が立つ!
まさか森川佳鈴がここまでやるとは。両親まで味方につけて、誰も彼女に違和感を持っていないなんて。
自分の中で認めている義姉は高橋美咲だけ。森川佳鈴に美咲をいじめさせるなんて絶対許せない。美咲の名誉を取り戻す手伝いをして、ついでに森川佳鈴にも釘を刺してやる。
ただ……森川佳鈴には昔一度会ったことがある。何年も前だけど、高橋美咲と一緒に現れて森川佳鈴に気づかれたら、面白くない。
うーん、どうしよう?
すぐに九条凛は妙案を思いつき、にやりと笑って心の中で鼻で笑った。森川佳鈴に本物を見せてやる!
……
翌日、九条凛は時間通りに高橋美咲の一戸建てに車で迎えに来た。
高橋美咲が車のドアを開け、運転席の九条凛を見て、しばらく呆然とした。目を細めてじっと観察し、ためらいがちに「……凛?」と声をかける。
スポーツカーに座る九条凛は、ロングの巻き髪にバッチリ濃いメイク、セクシーなボディコンワンピース姿。完璧な顔立ちがより一層華やかに映えるが、普段の九条凛とは正反対の雰囲気だった。
これでは高橋美咲がすぐに気づかないのも無理はない。
九条凛は鼻にかけていたサングラスを外し、分厚い付けまつげの目を見せた。「そう、私だよ。新しいイメチェン。どう?可愛いでしょ?」
もし森川佳鈴に気づかれなければ、こんな格好する必要なんてなかったのに。
でも、これでいい。
自分が派手で目立てば目立つほど、美咲の美しさが引き立つはず。
「……」高橋美咲は何も言えなかったが、凛が気に入っているならそれでいい。
助手席のドアを開けて乗り込む。
九条凛がちらりと見て「その格好、どうしたの?」
「え?何か変?」高橋美咲は少し戸惑い、自分の服を見下ろす。行き先を聞いていなかったので、着心地重視で選んだのだ。
「もちろん変だよ!」こういう女子会は服装が一番大事で、下手をすると笑いものにされるのだと九条凛はよく知っている。
自分の服は派手だけど、全部高級ブランド。高橋美咲が今のまま行ったら、絶対にバカにされる。
「まずは別の場所に行くよ。」
そう言ってアクセルを踏み、車は勢いよく走り出した。
九条凛が連れてきたのは、以前桜井奈緒の婚約パーティーの時にも来た吉田美玲スタジオだった。
今日は吉田美玲本人が店にいて、九条凛を見てしばらく誰だか分からず、ようやく声をかけた。
「あら、九条お嬢様!いったいどうしたんですか――」
「私のことは気にしないで。親友を預けるから、完璧な社交界のお嬢様に仕上げてあげて。」
そう言って、九条凛は高橋美咲を前に押し出した。
You might also like




