Chapter 30
九条社長に彼女がいるって本当?
「ピロン。」九条凛のスマホがメッセージ通知音を鳴らした。彼女はハッと我に返り、画面を開いた。
「またあの女、見せびらかしてる!」九条凛はスマホを高橋美咲に差し出した。画面には桜井奈緒が投稿したばかりの写真が表示されている。凛は桜井奈緒の通知をオンにしているので、すぐに更新が分かるのだ。
美咲は目を伏せて画面を覗き込んだ。
桜井奈緒は病院で傷の手当てを受けている自分の写真を投稿していた。九条悠真が身を屈めて薬を塗っている場面だ。キャプションは甘々で、どれだけ大事にされているかをアピールしている。
そのあまりにあざとい写真を見て、美咲の唇がわずかに上がった。
足りないものがある人ほど、見せびらかしたがるものだ。桜井奈緒は本当に九条悠真に夢中なのだろう。他の女性が彼に会いに来ても気にせず、何事もなかったかのように振る舞いながら、自分の存在を主張している。
「好きにさせておけばいいのよ。その時が来たら、うちの兄という最強の切り札を連れて行って、一瞬で黙らせてやればいいんだから!」九条凛は鼻で笑った。
美咲は凛が「九条蓮」とどう呼んだか気づかなかった。ただ、あの「偽の九条蓮」——つまりカギカッコ付きの蓮のことだと思い込んでいた。
彼女は微笑んでうなずいた。「心配しないで。私、そんなに簡単にいじめられるタイプに見える?」
「でもさ、ちょっと気になるんだよね。悠真の母親って、すごくプライド高いじゃない?前は美咲のことも見下してたし。桜井奈緒の家柄だって、別に美咲と大差ないでしょ?それなのに、あっさり奈緒との交際を認めたんだよ。」
九条沙耶香が美咲に対してどんな態度だったか、凛は自分の目で見てきた。
でも今は、桜井奈緒に対しては明らかに満足げで、未来の嫁として大歓迎している様子だ。本当に不思議だった。
「さあね。もしかしたら、桜井奈緒には何か特別な武器でもあるのかも。」それが美咲の出した唯一の結論だった。
凛は大きくうなずいた。
二人は楽しくランチを終え、帰り際、凛は美咲を励ますのを忘れなかった。「絶対に美咲の人生最大の問題、私が解決してみせるから!」
美咲は微笑んだ。——もうその「人生最大の問題」は解決済みじゃなかったっけ?
彼女はアパートに戻り、外壁デザインの下絵作業を続けた。
九条インターナショナルの最上階。
昼休み、数人のアシスタントが集まっていた。「気づいた?今日の九条社長、なんか機嫌悪そうじゃない?」
その時、真壁直人が小さな紙袋を持って外から戻ってきた。
「真壁さん、それ何ですか?」
「さっき九条凛さんが社長に届けてくれたものだよ。」凛は意味深な笑みを浮かべていたし、もしかしたら高橋美咲が凛に頼んで九条蓮に渡したのかもしれない、と真壁は思った。
ちょうどその時、九条蓮が出てきたので、真壁はすぐに紙袋を差し出した。「社長、九条凛さんからお預かりしたものです。」
凛が持ってきた……美咲から?
九条蓮は不思議そうな顔で受け取り、中を覗いた瞬間、表情が一気に険しくなった。
高橋美咲!
アシスタントたちは顔を見合わせた。いったい何が入っていたら、社長がこんなに怒るんだ?
九条蓮の冷たい視線が一同をなぎ払うと、全員がすぐにうつむき、黙々と食事をかき込んだ。もう上司のゴシップを詮索する勇気はない。
……でも、やっぱり気になる!
九条蓮は紙袋を持ったまま険しい顔で自室に戻り、ドアを閉めた。
その時、誰かが小声でつぶやいた。「い、今、あの中に男性用のサプリが見えた気が……社長、まさか……」
……ゴホン、ゴホン、ゴホン……
数人のアシスタントが食べかけでむせそうになった。
まるで真実をつかんだかのような衝撃!
だから朝から九条社長はあんなに不機嫌だったのか?体の調子が悪くて、欲求不満だったから?
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