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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 298 - 高橋美咲は相沢翔と同居していなかった

Chapter 298

高橋美咲は相沢翔と同居していなかった

「え?」と高橋美咲はさらに不思議そうな顔をした。「翔はここに住んでないよ。もうずっと前に大阪に戻ったし。」

九条蓮はわざと試すつもりで聞いたのだが、思いがけない答えに驚いた。

高橋美咲は相沢翔と一緒に住んでいなかったのだ!

その事実に、思わず歓喜しそうになる。自制心がなければ、今にも声を上げて笑ってしまいそうだった。

九条蓮は心の中の喜びを抑え、前に出て床に置かれていた袋を持ち上げ、優しく「行こう」と言った。

二人は昨日のマンションへと一緒に向かった。

中に入ると、九条蓮の父母と一緒に若い女性が座っており、三人で楽しそうに談笑していた。

どうやらこの女性が九条蓮の妹らしい。

彼女はまだ若く、整った顔立ちだが、九条蓮ほど目を引く美しさではない。同じ親から生まれても、こんなに違うものかと感心してしまう。

九条蓮の母は高橋美咲を見ると、すぐに手を振って呼び寄せた。「美咲さん、いらっしゃい。早く座って。」

高橋美咲は深呼吸し、勇気を振り絞って「お義母様、これ皆さんへのお土産です。お気に召さなければごめんなさい」と言った。

そう言って手に持っていた品々を差し出した。

どうしても「お母さん」「お父さん」とは呼べず、「お義母様」と言うだけで精一杯だった。

九条蓮の母はにこやかに「自分の家に帰ってきたのに、こんなにたくさん買ってこなくてもよかったのに」とすぐに言った。

「自分の家」という言葉と、九条蓮の父母の温かい態度に、高橋美咲の緊張は一気にほぐれた。

その後、九条蓮の母は隣の女性に優しく「佳鈴、美咲さんの荷物を中に運んであげて」と声をかけた。

九条蓮の母の隣に座っていたのは森川佳鈴、九条家の専属運転手・森川さんの娘だ。高橋美咲は九条凛の事情を知っているので、本当の妹は表に出せない。

そこで代役として誰かを用意するしかなかった。

ちょうど森川さんの娘・森川佳鈴は九条凛と同じくらいの年齢で、見破られにくい。

森川佳鈴は高橋美咲を見た瞬間から、密かに全身を値踏みするような視線を向けていた。

心の中で小さく鼻で笑う。

高橋美咲は確かに綺麗だ。それが九条蓮を惹きつけた理由なのだろう。でも九条蓮は自分の正体を彼女に明かしていない。つまり、彼女を信用していないし、きっと打算的な女だと思っているのだ。

森川佳鈴は海外留学経験もあり、修士号も持っている。しかもそこそこ美人なので、それなりの自負もある。

父が九条家の専属運転手をしているため、幼い頃から九条蓮のことを知っていた。

小さい頃からずっと九条蓮のそばに立てるよう努力し、勉強も自分磨きも人一倍頑張ってきたのは、すべて彼のためだった。

まさか自分が彼女になる前に、高橋美咲が突然現れて横取りするなんて——。

そのせいで、長い間失恋の痛みに苦しんだ。

だが昨夜、九条蓮の母から突然呼ばれ、「九条蓮と高橋美咲は離婚する予定だから、協力してほしい。妹のふりをしてほしい」と頼まれた。

その時、心の中で歓喜が湧き上がった。もし二人が離婚すれば、自分にもチャンスが巡ってくるのではないか。

だからすぐに九条蓮の母の頼みを引き受けた。

森川佳鈴は心の中の思いをすぐに抑え、にこやかに「はい、お母様」と返事をした。

そうして高橋美咲の手から贈り物を受け取った。

高橋美咲は品物を渡しながら、なぜか森川佳鈴の視線に違和感を覚えた。

どこか警戒心や敵意が混じっているような目つきだった。はっきりとは分からないが、高橋美咲は細かいところによく気がつく。

しかし高橋美咲は気にしなかった。初対面だから警戒されているだけだろう、と自分に言い聞かせた。

考え込む暇もなく、九条蓮の母がすでに温かく手を引いて「美咲さん、こっちに座って」と隣に座らせた。