Chapter 292
そんなに時間はかからない
突然、高橋美咲は何かに気づき、不審そうに「じゃあ、なんで九条凛も一緒だったの?」と問いかけた。
九条蓮は両親を迎えに行ったはずなのに、なぜ九条凛も一緒だったのか。
「凛は出かけるところだったから、ついでに送っただけ。」九条蓮はこういうやりとりにもすっかり慣れていて、平然と答えた。
高橋美咲は特に疑うこともなかった。今はそれを詮索している場合じゃない。今感じているのは、もうすぐ離婚するというのに、こんな状況でご両親に会うのはどう考えても不適切だということだった。
「先に何か理由をつけて帰ろうよ?今の私たちの関係で、ご両親に会うのはやっぱり無理があると思うんだけど……」
九条蓮は帰りたそうな高橋美咲の様子を見て、ゆっくりと「焦らなくていいよ。どうせもう休み取ってるし、そんなに時間かからないから」と言った。
高橋美咲「……」
誰が焦ってないって?こっちは不安で死にそうなんだけど!?
そのとき、九条絵美里が高橋美咲と九条蓮がひそひそ話しているのを見ていた。2人は本当に見た目もお似合いで、まさに才色兼備のカップルだった。彼女は満足そうに微笑み、うなずいた。
本当にこのお嫁さんには大満足だった。
結局、高橋美咲は現実を受け入れ、しばらく客として留まることにした。
九条絵美里は九条蓮に「お水を買ってきて」と指示し、「美咲さんにお茶を淹れてあげたいの」と言った。高橋美咲は丁寧に断ろうとしたが、無駄だった。九条絵美里の熱意はすごすぎて、何か言おうとするたびに話しかけられてしまう。
ようやく口を挟めたときには、九条蓮はすでに水を買って戻ってきていた。
高橋美咲は心の中で静かにため息をついた。
これまで自分が接してきた年配の人たちは、いつも自分に反対ばかりで、上から目線で偉そうな人ばかりだった。九条蓮の両親のように、こんなに温かくて親しみやすい人たちに会ったのは初めてだった。
どうしていいかわからず、戸惑ってしまう。
九条絵美里は九条智久の袖を引っ張り、「お水が来たわよ。早くお茶っ葉を出して、お嫁さんにお茶を淹れてあげて」と言った。
九条智久は立ち上がり、近くの棚に向かった。
棚の扉を開けると、ガラガラと音を立てて大量のカップ麺が落ちてきた。
高橋美咲はその騒ぎに思わず目を向けた。
九条智久は咳払いしながら「間違えて違う棚を開けちゃった。お茶っ葉は隣の棚だな」とごまかした。
そう言って、隣の棚を開けた。
ところが、そこにはキッチン用品がぎっしりで、お茶の気配はまったくなかった。
九条智久はかなり気まずそうにしつつ、心の中で(森川さん、いったいどこにお茶っ葉をしまったんだ……)とぼやいた。
森川さんは九条家の本当の専属運転手で、この家は森川さんの自宅だった。
彼の家族3人がここに住んでいる。さっき急な電話で森川さんに先に出てもらい、家を貸してもらっていたのだ。
九条智久はありとあらゆる棚を開けてみたが、どうしてもお茶っ葉が見つからない。
高橋美咲はぎこちなく「本当に見つからないなら、もういいですよ。私、お茶はなくても大丈夫ですから」と言った。
その方が少しでも早く帰れるし。
正直、こうして黙って座っているだけでもかなりプレッシャーで、全身が緊張していた。
九条絵美里は九条智久を不満そうに睨んだ。
いいところを見せるって言ってたのに、これじゃ台無しだ。自分の家なのにお茶っ葉の場所もわからないなんて、外で言われたらどうするのよ。
九条絵美里は高橋美咲に微笑みかけ、「お嫁さん、私たち遊びすぎてて、お父さんがどこにお茶っ葉をしまったか忘れちゃったのよ。ちょっと待ってて、急がなくていいからね!」と言った。
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