Chapter 278
本当に冗談がお上手ですね
相沢翔は今日の九条蓮にどこか違和感を覚えつつも、特に問題があるとは思わなかった。にこやかに「そんなこと言われたの初めてですが、九条社長にそう言われると、確かに自信はある方かもしれません」と返した。
「少なくとも自覚はあるようだな。」
相沢翔は気まずそうに笑い、「九条社長、本題に戻りましょう。今回の提携についてですが……」と話を切り出した。
だが相沢翔が言い終わる前に、九条蓮は目だけで笑みを浮かべながら、淡々と「提携は白紙だ」と告げた。
「提携は白紙……!?」相沢翔はあまりの衝撃に椅子から飛び上がりそうになった。一瞬固まった後、二度ほど乾いた笑いを漏らす。「まさか九条社長がそんな冗談をおっしゃるとは思いませんでした。本当に冗談がお上手ですね。」
この提携のために、相沢グループはすでにいくつもの大型案件を断っていた。もし本当に九条蓮が約束を反故にしたら、相沢グループの損失は計り知れない。
そう考えただけで、相沢翔の胸は締め付けられるように痛んだ。
もし本当に失敗したら、大阪に戻った時、父親に何をされるかわかったものじゃない。
徐々に焦りが募っていく。
九条蓮は相変わらず落ち着いた表情で、ただ一瞥をくれるだけだった。「冗談を言っているように見えるか?」
相沢翔の笑顔は凍りつき、表情が徐々に変わっていった。
本気なのか?
しばらく沈黙した後、相沢翔はようやく声を絞り出した。「九条社長、以前は一緒にやっていくとおっしゃっていましたよね?なぜ急に取りやめに?理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
今にも泣き出しそうな顔だった。
「社長、もし何かご不満があるなら、はっきり言ってくださいよ!」
どうして突然提携が白紙になったのか。大阪に戻って父親にどう説明すればいいのか、頭を抱えたくなる。
九条蓮は相沢翔を見つめ、皮肉を込めて言った。「気が変わるのに理由がいるか?相沢さんこそ、そのあたりは慣れているんじゃないか。」
かつては自分の利益だけ受け取って去り、今度は高橋美咲を誘惑して両方から利益を得ようとし、まだ提携を望むとは——
相沢翔は他人を馬鹿にしているとしか思えないし、都合よく考えすぎだ。
「……」相沢翔は何も言えなかった。
慣れているって何だ?九条蓮はいつも言葉の半分しか口にしない。何を考えているのか本当にわからない。
高橋美咲と九条蓮の関係を利用して裏口を狙ったつもりが、逆に手玉に取られてしまった。
どう考えても、どこで間違えたのか理解できない。
相沢翔が必死に食い下がろうとする前に、九条蓮はすでに立ち上がっていた。そして真壁直人に「相沢さんのこと、よろしく頼む」と言い残した。
「かしこまりました、九条社長」と真壁直人が応じる。
九条蓮は会議室を後にした。
相沢翔は呆然としたまま、言葉も出なかった。
一体何が起きているんだ?九条蓮は突然、誰に対しても冷酷になった。もしかして高橋美咲と何かあったのか?
考えれば考えるほど納得がいかず、高橋美咲に直接聞いてみるしかないと決意した。
真壁直人が残され、相沢翔に向かって「相沢さん、申し訳ありませんが、九条社長のご判断で提携は白紙となりました」と伝えた。
相沢翔はそれ以上何も言わず、立ち上がって「それでは、これで失礼します」とだけ言った。
九条インターナショナルのビルを出ると、相沢翔はすぐに高橋美咲の番号に電話をかけた。
高橋美咲はまだ仕事中でぼんやりしていたが、相沢翔からの電話を受けた。
電話がつながるや否や、相沢翔の詰問する声が響く。「高橋美咲、一体君と九条蓮は何をやってるんだ!」
高橋美咲は周囲を見回し、小声で「翔……私たち、離婚するの」と答えた。
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