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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 273 - やっぱり離婚しよう

Chapter 273

やっぱり離婚しよう

部屋が静まり返ってから、ようやく彼女の涙が止めどなく溢れ出した。

始まることさえなかった片想いは、これで終わった。高橋美咲と九条蓮は、何も残らなかった。

その夜、高橋美咲は荷造りを始めた。

もう九条蓮と別れるのだから、ここに住み続けるわけにはいかない。でも、どこへ行けばいいのか、自分の居場所がどこなのか分からず、しばらく途方に暮れてしまった。

また目頭が熱くなり、高橋美咲は慌てて心の中の思いを押し殺した。

その夜、九条凛はバーへ車を走らせた。

九条蓮が高橋美咲を九条千紗に誘拐されたことを知っていたのだから、当然九条凛も知っていた。その時、彼女は九条蓮と一緒に助けに行きたかったが、「邪魔をするな」と言われてしまった。

その後、九条蓮が帰ってきた。

彼は「高橋美咲とは終わった」とだけ言い、自分の部屋にこもってしまった。いくらドアを叩いても無駄だった。九条凛は焦り、すぐに高橋美咲に何があったのか聞きに行こうとした。高橋美咲がバーにいると知ると、すぐに駆けつけた。

九条凛が中に入ると、高橋美咲が一人でカウンターに座っているのが見えた。その背中は寂しげで、どこか儚さを感じさせ、見ているだけで胸が締め付けられるようだった。

高橋美咲は一人で惨めに酒を飲んでいた。

艶やかな黒髪が背中に流れ、カウンターにもたれかかる姿はどこか気だるく、妙に色っぽかった。すでに近くの男たちが、声をかけようと様子をうかがっている。

九条凛は他のことなど気にしていられなかった。急いで駆け寄り、「美咲、何してるの? 帰ろう」と声をかけた。

「帰ろう」と言われた瞬間、高橋美咲の目に一瞬だけ戸惑いの色が浮かんだ。

彼女はかすかに自嘲気味に微笑み、「もう私には帰る家なんてないの」と言った。

高橋家はもう自分の家ではない。とっくに出てきた場所だ。そして、後に九条蓮と暮らした場所も、もう自分の家ではない。九条蓮と離婚するのだから、帰る場所なんてどこにもない。

「あっ、他にも私の部屋があるから。そこに泊まって。ここはあまり安全じゃないし、行こう。」

今日はボディガードも連れてきていない。高橋美咲はあまりにも美しすぎて、周囲の男たちが獲物を狙うような目で見ている。このまま酔いつぶれたらどうなるか分からない。

九条凛は安全のことも考えざるを得なかったし、ここではゆっくり話もできない。高橋美咲も反対しなかった。九条凛が来る前にすでにかなり飲んでいて、頭がぼんやりし、反応も鈍くなっていた。

「行こう。」九条凛は高橋美咲の手を引いて連れ出した。

九条蓮は九条家本邸にいたので、九条凛が高橋美咲をそこに連れて行くのは都合が悪い。だから自分の部屋にそのまま連れて行った。

ここは普段から掃除が入っていて、九条凛も時々泊まりに来る場所だった。

二人はリビングに入った。高橋美咲はふらふらとソファに向かい、そのまま倒れ込んだ。すっかり力が抜けている。

九条凛は隣に座り、高橋美咲の様子をじっと見つめて心配そうに尋ねた。「美咲、いったい何があったの?……九条蓮と。」

高橋美咲は黙ったまま、何も言わなかった。

しばらくして、かすかに「離婚するの」と呟いた。

九条凛は眉をひそめた。「どうして離婚なんてことに? 何か知ったの?」

この時、九条凛はどうしても疑わずにいられなかった。高橋美咲が九条千紗に連れ去られた時、九条蓮の本当の正体を知ってしまい、騙されていたことに怒って離婚を決意したのではないかと。

全部自分のせいだ!

最初から隠し通すべきじゃなかった。ひとつの過ちがまた次の過ちを呼び、どんどん取り返しのつかないことになってしまった。

九条凛は高橋美咲の手を握りしめ、今にも泣きそうな顔で言った。「美咲、ごめんね。全部私のせいだよ。九条蓮は、私の兄なの……」