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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 265 - 招かれざる客(続き)

Chapter 265

招かれざる客(続き)

もし自分が高橋家に戻って高橋彩花と資産を争うことを心配しているのなら、そんな心配は無用だ。自分は絶対に高橋家には戻らない。

そう思うと、高橋美咲の表情は険しくなり、冷たく言い放った。「奥様に伝えて。会う時間なんてないって。」

そう言って、高橋美咲はその場を立ち去ろうとした。

ところが、男たちは周囲の目も気にせず、両脇から一人ずつ近づいてきて、高橋美咲の腕をつかみ、そのまま強引に車へ押し込んだ。

黒いセダンはすぐにその場を走り去った。

森川茉莉は恐怖で立ち尽くし、目の前で高橋美咲が連れ去られるのをなすすべもなく見ていた。

あの人たちは一体誰なの?高橋美咲に何をするつもりなの?

「今すぐ警察に連絡しなきゃ!」

慌ててスマートフォンを取り出したが、バッテリーが切れていた。

その瞬間、森川茉莉は涙が出そうなほど焦り、九条インターナショナルから誰かが出てくるのを見つけると、すぐに駆け寄ってその人の腕をつかみ、「すみません、携帯を貸してもらえませんか?うちの上司が今、誘拐されたんです。警察に電話しないと」と訴えた。

ちょうど出てきたのは真壁直人だった。

森川茉莉は彼を知らなかったが、真壁直人は高橋美咲の周囲の人間をよく把握しており、森川茉莉が高橋美咲のアシスタントだと知っていた。

今の森川茉莉の言葉を聞いて、真壁直人の顔色は一気に険しくなり、「今、高橋さんが誘拐されたって言ったのか?」と詰め寄った。

森川茉莉は彼を見上げて言った。「高橋取締役をご存知なんですか?」

真壁直人は他のことを気にしている暇もなく、すぐに携帯を取り出して電話をかけた。通話しながら、「さっき高橋さんを連れ去った連中はどんな奴らだった?見た目は?何人いた?」と尋ねた。

森川茉莉は怯えきって、震える声で「私も分かりません。すごく怖くて、すごく凶暴そうでした。ただ高橋取締役に会いたいって言って、そのまま連れて行かれたんです」と答えた。

通話を終えると、真壁直人はすぐに監視カメラの映像を確認しに向かった。

警備室へ向かう途中、九条蓮に電話をかけて高橋美咲が誘拐されたことを伝えた。しかし、九条蓮の電話は何度かけても繋がらなかった。

真壁直人の心は一気に沈んだ。九条さんは一体どこに行ったんだ?

車は道路を走っていた。高橋美咲は後部座席に乱暴に放り込まれ、隣には男が座ってじっと彼女を見つめていた。

美咲は体を起こすと、そっと端に身を寄せ、バッグに手を伸ばして助けを呼ぼうとした。

だが、隣の男はその意図を見抜いたように彼女を見やり、嘲るように言った。「電話なんて必要ない。俺の奥様に手を出せる奴なんていないんだ。大人しくしてた方が身のためだぞ。縛られたいのか?」

その言葉を聞いて、高橋美咲の目が暗くなった。

この男が脅しているだけなのか、本当に怖いもの知らずなのか分からなかった。

まさか自分がいない間に、高橋家の影響力がここまで大きくなっているとは思わなかった。こいつらがハッタリなのか、本当に無法者なのかは分からないが、抵抗すればろくなことにならないのは確かだ。

高橋美咲は徐々に冷静さを取り戻した。

車窓から流れる景色を見ると、すでに中心街を離れていた。やがて車は高級住宅街の一角に入り、4階建ての一軒家の前で停まった。

黒服の男が「降りろ!」と命じた。

高橋美咲はバッグを持って車を降り、複数の黒服に見張られながらその一軒家に入った。

振り返ると、彼女が中に入った後も黒服たちは玄関前で警戒していた。

高橋美咲の心はさらに沈んだ。ここから逃げ出す隙はなさそうだ。

ならば、九条家が一体何を企んでいるのか、確かめてやる——そう思った。

深呼吸して覚悟を決め、怯まずに奥へと進んだ。鉄の扉を押し開けてリビングに入る。