Chapter 26
全然ありがたくない
真壁直人たちなら、「悪くない」と言われただけで一日中ニコニコしているのに。
高橋美咲の料理の腕は抜群だ。ご飯を炊き始めると、野菜を切ったりと手際よく一人でこなしていく。
一品目ができあがり、運ぼうとしたその時、九条蓮がキッチンに入ってきて、自ら手を伸ばし「俺が運ぶ」と言った。
手伝ってくれる姿に、高橋美咲の口元にうっすら笑みが浮かび、さっきまでの沈んだ気分が一気に晴れた。
ただ、ちょっと不器用なだけで、人を褒めるのが苦手なんだ――そう思った。
食卓では、二人が向かい合って座る。静かで温かな雰囲気は、まるで長年連れ添った夫婦のようだった。
九条蓮の好みがわからなかったので、高橋美咲は今夜は二品多めに作った。
ピーマンと豚肉の炒め物、セロリ炒め、トマトと卵の炒め物――三品とスープで二人には十分すぎる量だ。
九条蓮の視線が目の前のピーマンと豚肉の炒め物に止まる。端正な眉が一瞬ひそまるが、すぐに元に戻った。
彼はピーマンを箸でつまみ、わざと高橋美咲の茶碗に入れた。
「ありがとう。」高橋美咲は少し驚いた。
九条蓮が自分から取り分けてくれるなんて思ってもみなかったので、少し嬉しかった。
だがすぐに、高橋美咲は自分の勘違いに気づく。
九条蓮が自分の茶碗にピーマンを入れたのは、どうやら自分がピーマン嫌いだかららしい!
彼は料理を取るたびにピーマンだけをきれいに避けて、全く手をつけない。
高橋美咲はしばらく黙り、容赦なく指摘した。「さっきピーマンを私の茶碗に入れたのって、自分が嫌いだからでしょ?」
その視線には挑発が込められていて、「ごまかさないで。自分が嫌いだから私にくれただけでしょ」と言わんばかりだった。
「ピーマンはビタミンCが豊富で、脂肪の代謝を促進し、脂肪を減らす効果がある。」九条蓮は表情を変えずに言った。
つまり、太ってるってこと?
高橋美咲の不機嫌そうな顔を見て、九条蓮はようやく九条凛に「女の子の前で太ってるなんて言うのは失礼」と言われたことを思い出した。
「スタイルはいいんだから、ピーマンを食べてそのままキープすればいい。もっと食べな。」と付け加えた。
その理屈に高橋美咲は冷笑し、山盛りのピーマンを箸で九条蓮の茶碗に入れた。
「そうだね。ピーマンは体にいいから、あなたももっと食べた方がいいよ。」これでごまかせると思うなよ!
九条蓮「……」
高橋美咲はそのままにっこりと微笑む。九条蓮の茶碗に山のように積まれたピーマンを見て、彼の眉は蚊でも潰せそうなほどひそまった。
結局、彼は深く息をつき、自分の茶碗のピーマンを全部食べきった。
食後、また九条蓮にお皿を割られたら困るので、高橋美咲は自ら進んでキッチンに立ち、食器を洗った。
片付けを終えてキッチンから出ると、九条蓮はソファでスマホを見ていた。静かな時の彼は特に上品で近寄りがたい雰囲気をまとっている。
彼は顔を上げて「話がある」と言った。
「何?」高橋美咲は不審そうに近づき、隣に腰を下ろした。
九条蓮はしばらく黙った後、「九条悠真と3年付き合ってたのか?」と尋ねた。
高橋美咲は隠さずにうなずいた。「うん、3年付き合ってた。」
九条蓮は鼻で笑い、目にあからさまな嘲りを浮かべた。「3年もかかってアイツがクズだって気づいたのか?見る目なさすぎだな。」
てっきり雑談でもするのかと思ったら、いきなり皮肉から入るなんて。
毒でも食べたの?
高橋美咲は苛立ち気味に「それは知らなかったからで、今はもうちゃんと距離を置いてる!」と言い返した。
九条悠真と距離を置いてる?
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