Chapter 257
九条蓮の女
前回は自分の早とちりだったけど、今回は紛れもない現実だった。
本当は隠しておこうと思ったけど、神谷海斗が「もし知ってて九条蓮に伝えなかったら、もっと大変なことになるかもしれない」と言うので、
悩んだ末、九条凛は神谷海斗を引き連れて九条インターナショナルまで九条蓮を訪ねに行った。
「見せて。」九条蓮は神谷海斗に手を差し出した。
神谷海斗は立ち上がり、スマートフォンを手渡した。
メッセージは匿名のバーチャル番号から送られてきていて、誰が送ったのかは特定できなかったが、内容は高橋美咲に関するものだった。
高橋美咲が九条インターナショナルの外の道路脇に立っているところから、相沢翔が車で迎えに来て彼女が乗り込むところまで、すべて写真に収められていた。写真を撮った人物は高橋美咲と相沢翔をずっと尾行し、二人が代官山パークレジデンスに入るまでを記録していた……
九条凛はその写真を見たとき、心臓が止まりそうなほど震えが止まらなかった。
ましてや、九条蓮本人がそれを見たらどうなるか。
まさか高橋美咲が……兄が残業している間に相沢翔を家に連れ込むなんて。男女が二人きりで家にいたら、一体何をしているのか……。
九条凛は自分をつねって、これ以上動揺しないようにした。もう九条蓮の顔色を見る勇気もなかった。
九条蓮の視線はスマートフォンに注がれ、表情は徐々に冷たくなっていった……
最近、高橋美咲が自分からの贈り物を受け取ってくれるようになったのは、少しは心を開いてくれた証だと思っていた。だが、現実は彼を目覚めさせた。自分が楽観的すぎたのかもしれない。
高橋美咲の心の中にある「月明かり」は、やはり何よりも大切な存在で、自分は所詮、いてもいなくてもいい存在なのだ。
もし相沢翔と高橋美咲が、自分たちが一緒に寝たあのベッドで……と考えるだけで、胸の奥から殺気がこみ上げてきた。
九条凛は突然、背筋がぞくりとした。ごくりと唾を飲み込み、震える声で「兄さん、先に私と神谷海斗で彼を追い出してこようか?何があっても、ゆっくり話し合えばいいから」と言った。
だが、九条蓮は意外にも立ち上がり、ノートパソコンを閉じた。「神谷海斗、メッセージを送った人物を調べろ。」
「わかった。」
そう言い終えると、九条蓮は隣に置いてあったスーツの上着を手に取り、鋭い足取りで外へと歩き出した。
九条凛はその背中を見送りながら、心の中で「やばい」と思った。
兄が現場を押さえに行く気だ!
……
代官山パークレジデンス。
高橋美咲はマンションに戻ると、相沢翔の相手をする気にもなれず、買ってきた食材を持ってそのままキッチンに直行した。
一方、相沢翔は暇を持て余し、まるで自分の家のように部屋を見て回り始めた。寝室が一つしかないのを見て、口元に意味深な笑みを浮かべた。
もうここまで来てるなら、高橋美咲はとっくに九条蓮を落としてるに違いない。
あの子、実はずっと隠してたんだな。
もしかして、恥ずかしくて自分に言えなかったのか?あとでしっかり二人の進展具合を問い詰めてやろう。
相沢翔が妄想を膨らませていると、外から高橋美咲の声が聞こえてきた。「翔、ご飯できたよ。」
「おう、今行く。」相沢翔は我に返り、ダイニングへ向かった。
ダイニングでは、二人が向かい合って座っていた。テーブルの上には三品とスープの簡単な食事が並んでいる。相沢翔が何か言いかけたその時、高橋美咲のスマートフォンが鳴った。
彼女が画面を見ると、九条凛からの着信だった。
高橋美咲がスワイプして通話を取ると、まだ何も言わないうちに、九条凛が声をひそめて興奮気味に話し始めた。
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