Chapter 253
彼の背後には指南役がいる
高橋美咲は森川茉莉をちらりと見て「そういうことになるかな」と答えた。
実際は九条蓮の友人のために、最短で女性を落とす方法を一緒に検証しているだけだったが、高橋美咲はまるで九条蓮にアプローチされているかのように受け止めていた。しかも、すっかりその気になって楽しんでいるし、少し照れくささも感じていた。
森川茉莉は思わず息を呑み、さらに畳みかける。「え、本当に?どんな人なんですか?お仕事は?イケメンでお金持ちなんですよね?」
「特別お金持ちってわけじゃないよ。彼はただの運転手。でも……」高橋美咲は口元に微笑みを浮かべ、甘い表情で「イケメンで優しくて、気配りもできるし、世界中の男性の99.9%より素敵だと思う」と言った。
家柄とかそういうことは、高橋美咲にとってあまり重要ではなかった。
高橋美咲の顔にあふれる幸せそうな表情を見て、森川茉莉は彼女もその男性に本気で惹かれているのだと確信した。どうやら高橋美咲の相手は、もうすぐ念願叶って彼女を射止めそうだ。
想像していたのとは少し違ったけれど、森川茉莉の好奇心は十分満たされた。
「高橋取締役、今の話、みんなに伝えてもいいですか?」と、森川茉莉はおそるおそる尋ねた。
外ではまだ多くの人が彼女の報告を待っている。みんなの代表として情報を集めに来た森川茉莉は、戻ったらまた質問攻めに遭うのは間違いない。
高橋美咲も、ここ数日プレゼントを受け取る姿を見られて、色々と噂されていることは知っていた。どうせ勝手に憶測されるくらいなら、いっそオープンにした方がいい。別に恥ずかしいことでもないし。
まだ九条蓮の彼女ではないけれど、そう遠くないうちにきっと彼女になれると信じていた。
「いいよ」と高橋美咲はうなずいた。
「やった!」森川茉莉は笑顔で「じゃあ、これ以上お仕事の邪魔はしません」と言って、
そのままそっと席を離れた。
……
同じ頃、桜井奈緒のオフィス。
九条悠真と桜井奈緒は、ブラインド越しにメゾン・ヴェルヌの社員たちがランチをしながらおしゃべりしている様子を眺めていた。
さっき高橋美咲がプレゼントを受け取った場面も、その時の嬉しそうな表情も、二人はしっかり目撃していた。
九条悠真は、かつて自分が高橋美咲に物を贈った時、あんな驚きや喜びの表情を見せてくれたことは一度もなかったと感じていた。
他の女性たちが自分から贈り物をもらった時の方が、よほど感激していたくらいだ。
男としての競争心がふつふつと湧き上がり、どうしても納得できない気持ちが再びこみ上げてきた。無意識に拳を握りしめる。
桜井奈緒の表情も暗く、信じられないという思いが隠せなかった。高橋美咲がこんなに人気者になるなんて。
ここ数日、本当に誰かが高橋美咲を狙っているようだった。
気持ちを少し抑え、桜井奈緒は九条悠真にそっと尋ねた。「悠真、この前言ってた高橋美咲が大物に取り入ったって話、調べがついた?今また別の人が彼女にアプローチしてるみたいだし、後ろ盾が普通じゃないとしたら、私たちにも影響が出るかもしれないわ。」
なぜ高橋美咲ばかりが、いつも自分より目立つのか桜井奈緒には分からなかった。
学生時代もそうだった。多くの人がまず高橋美咲を狙い、ダメだった時に仕方なく自分のところへ来るのだ。
高橋美咲に嫉妬しないはずがない。でも今は九条悠真を自分のものにできた——やっと一度は勝てたのだ。
「調べたよ」と九条悠真は冷たく言った。
桜井奈緒はすぐに身を乗り出す。「誰なの?」
「一人じゃない」九条悠真は、高橋美咲が短期間でどうやって複数の男と関係を持ったのか理解できなかった。まさか自分と付き合っていた時から、すでに始まっていたのか?
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