Chapter 250
お願い、聞いてくれる?
実は高橋美咲は、ここで自分の気持ちをさりげなく込めていた。九条蓮が自分に花を贈ってくれたら、きっと心が動くと伝えたかったのだ。あまりにも唐突にならないように、そっと彼にヒントを与えたつもりだった。
だが、九条蓮は考え込んでいるようで、彼女のヒントには気づいていない様子だった。
高橋美咲の目には、ほんの少し落胆の色が浮かんだ。
彼女はさらに続けた。「同じ理屈で、あなたの友達がその女の子に花を贈ったら、その人のドキドキポイントも上がるの。もしその友達のポイントが、彼女の心の中にいる“白い月明かり”の人のポイントを超えたら、もう“白い月明かり”なんて意味がなくなるでしょ?」
それはまさに、彼女が九条蓮に対して感じていることと同じだった。彼が自分を助けてくれるようになってから、彼のドキドキポイントは少しずつ彼女の心の中で積み重なっていった。
そして、あの最後の出来事で、その想いは一気に爆発した。
九条蓮のドキドキポイントは、ついに九条悠真のそれを超えてしまった。だから今の彼女の目には、もう九条悠真の居場所はなかった。頭の中は九条蓮のことでいっぱいだった。
高橋美咲の話を聞き終えた九条蓮は、少し目を細めた。
そして突然、静かに尋ねた。「もし僕が君に花を贈ったら、君のドキドキポイントはどれくらいになる?」
「ごほっ、ごほっ、ごほっ……」お茶を飲んでいた高橋美咲は思わずむせてしまった。さっきまで九条蓮はヒントに気づいていなかったはずなのに、どうして急にそんなことを聞くの?
彼女は九条蓮のことが好きだから、もし彼が花を贈ってくれたら、ドキドキポイントはもちろん100パーセント。むしろ上限がなければ振り切れてしまうくらいだ。
高橋美咲はむせて咳き込み、顔を真っ赤にして、しばらく何も言えなかった。
九条蓮は見ていられず、そっと手を伸ばして彼女の背中を優しくさすり、呼吸を整えるのを手伝った。
しばらくしてようやく高橋美咲は落ち着いた。
だが、まだ言葉を発する前に、耳元で九条蓮の声が聞こえた。「美咲、ひとつお願いを聞いてくれない?」
「な、なに?」
九条蓮は低い声でゆっくりと言った。「僕の友達、ちょっと鈍感でさ。どんなことをすれば一番ドキドキポイントが高くなるのか、たぶん分かってないんだ。一緒に彼のための最適なプランを考えて、早く成功できるように手伝ってくれない?」
高橋美咲はその言葉を聞いて固まった。一緒にドキドキポイントについて話し合うってこと?
うそでしょ!本当にそんなことがあるの?
彼女の心臓はドキドキと激しく高鳴った。それってつまり、九条蓮と疑似的に恋人同士みたいな体験ができるってことじゃない?
こんなにおいしい話、どこを探してもない!
その瞬間、高橋美咲は九条蓮の友達の存在が素晴らしいものに思えてきた。さっきまで「幼なじみの件から手を引いてほしい」なんて思っていたのを撤回したい気分だった。
高橋美咲は嬉しそうに言った。「実は……フェアな競争で、卑怯なことや道徳的に問題のあることをしなければ、女の子を追いかけるのは悪いことじゃないと思う。あなたのお願い、引き受けるわ!」
彼女が「卑怯」とか「道徳的に問題がある」と言った瞬間、九条蓮の目が一瞬揺れた。
彼は相沢翔を買収しただけでなく、今後も相沢翔に対して何か仕掛けるつもりだった。それは高橋美咲の目には許されないことなのだろうか。
やはり、まだ自分の正体は明かせない。
少なくとも、二人の関係がしっかりするまでは待つしかない。
突然、高橋美咲は何かを思い出して付け加えた。「でも、人によって感じ方は違うから、私たち二人で考えたことが必ずしも他の人に合うとは限らないよ?」
「大丈夫。」九条蓮は気軽に言った。「彼が一人で手探りするより、ずっとマシだから。」
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