Chapter 246
御膳庵のゴールドカード
御膳庵の入口に着くと、長蛇の列が店の外、通りまで続いていた。本当にすごい人だ。
高橋美咲は内心ほっとした。会員カードがあってよかった。
ちょうど前に進み、スタッフに声をかけようとしたその時、後ろから手が伸びてきて、金色のカードを差し出した。
その直後、聞き覚えのある声が響いた。「すみません、こちらのVIP最上級カードなら、並ばずに入れますか?」
スタッフはそのゴールドカードが御膳庵のVIPゴールドカードだとすぐに気づいた。
彼女はすぐに高橋美咲を素通りし、後ろの女性に向かって丁寧に言った。「いらっしゃいませ、御膳庵ではVIPのお客様専用の個室をご用意しております。VIPの方はお待ちいただかずにご案内できます。」
なんと、列に割り込んできたのは柳小路だった!
その隣には、華やかな服装の高橋グループのデザイナー、吉田依織がいた。
以前、高橋グループが九条インターナショナルにデザイン部の誰かを派遣することになった時、多くのデザイナーは行きたがらなかった。東京は大阪に比べて格が落ちるし、まるで左遷のようなものだったからだ。
結局、柳小路が選ばれ、陰で彼女の不幸を面白がる人も多かった。
吉田依織もその一人で、柳小路とは表向きは仲良しだが、実際はライバル関係だった。
二人は表では「姉妹」と呼び合いながら、裏では常に張り合っていた。
吉田依織が東京まで柳小路を訪ねてきたのは、彼女の惨めな様子を見たかったからだ。
まさか柳小路が御膳庵のVIPカードを持っていて、しかも自分を招待すると言い出すとは思わなかった。御膳庵のVIPカードは多額の利用とポイントが必要で、簡単には手に入らない。
柳小路が持っているはずがない、と半信半疑だった。
でも柳小路が自信満々なので、疑いながらもついてきた。
実際にスタッフがカードを認めたのを見て、吉田依織の目には羨望と嫉妬が一瞬浮かんだ。
まさか東京に来て、柳小路がこんなにいい暮らしをしているとは思わなかった。
知っていたら自分が志願して来たのに、と悔しさがこみ上げる。
「柳さん、そのVIPカード、こんなに役立つなんて思わなかった。大阪にも御膳庵があるよね?今度貸してくれない?」と吉田依織が言った。
柳小路の目が一瞬揺れた。絶対に貸すつもりはない。
彼女は「高橋グループのデザイナーが九条インターナショナルを視察に来るから、ちゃんと接待しないと」と言い訳し、こっそり九条社長にカードを借りていた。数日後には返さなければならない。
御膳庵は安くないが、吉田依織の羨望の眼差しを見ると、たまらなく優越感を感じる。
柳小路が断る理由を考えようとした時、ちょうどスタッフが助け舟を出した。
スタッフが二人に近づき、「お二人様でよろしいですか?」と尋ねた。
「はい、二人です」と柳小路が答えた。
「かしこまりました。ご案内いたします。本日は大変混み合っておりまして、VIP個室も残り一室のみとなっております。他のVIPのお客様がいらした場合、ご案内できないこともございますので……」
一行はそのまま中へ入ろうとした。
高橋美咲の目が鋭くなり、「待って!」と声を上げた。
もし相手が他の人なら、高橋美咲も黙っていたかもしれない。
だが、相手は柳小路と吉田依織。高橋グループ時代、二人は高橋彩花の派閥で、高橋美咲を陥れるために色々と手を貸していた。
この二人に好き勝手はさせない!
その時になって、柳小路と吉田依織は高橋美咲が目の前にいることに気づいた。
柳小路の顔が一気に曇り、「高橋美咲、あんたもこんな店で食事するの?しかも割り込みなんて!」と吐き捨てた。],
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