Chapter 243
花束は九条蓮からだった
「どうして俺が送った花を断ったんだ?」と九条蓮が尋ねた。
美咲はまさに九条蓮に文句を言おうとしていたが、その質問を聞いた瞬間、責める言葉が喉元で凍りついた。
えっ!?
あの花束、九条蓮からだったの!?
美咲は呆然とし、しばらく言葉が出なかった。
頭の中は、今日あの花束を断った記憶でいっぱいだった。改めて九条蓮の険しい顔を見ると、明らかにこの件で不機嫌になっている。
うそでしょ!
美咲は顔を覆い、できることなら時間を巻き戻して自分を止めたくなった。
やってしまった。九条蓮が初めて自分に贈り物をしてくれたのに、それも意味のある花束だったのに、どうして断ってしまったんだろう!
今日九条蓮が返信してくれなかったのも当然だ。もし自分が九条蓮に何か贈って、それを直接断られたら、きっとすごく傷ついただろう。
美咲は慌てて謝った。「ごめんなさい。あの花があなたからだって知らなかったの。九条悠真が送ってきたと思って、すぐ断っちゃったの。」
「九条悠真が花を送ったのか?」と九条蓮が低い声で言った。
「う、うん……」美咲は後悔でいっぱいになりながら九条蓮を見て、「じゃあ、今日のあの花束は?」と尋ねた。
「捨てさせた。」
「えっ……捨てちゃったの?」
美咲はあまりの後悔に胸を叩いて足を踏み鳴らしたい気分だった。まるで一億円を失ったかのような喪失感で、考えれば考えるほど受け入れられなかった。九条蓮の愛情を失ったような気がした。
しばらくして、美咲は「九条蓮、忘れ物した。戻って」と言った。
九条蓮は車をUターンさせ、九条インターナショナルへ引き返した。
10分後、車は道路脇に停まった。美咲はドアを開けて「ちょっと待ってて。すぐ戻るから」と言った。
そう言い残して、美咲は急いで建物の中へ駆け込んだ。
九条インターナショナルに入ると、裏手のゴミ置き場へ直行した。花束がまだ残っていないか確かめたかったのだ。
それは九条蓮が初めてくれた花束だった。たとえゴミ箱に捨てられていても、どうしても取り戻したかった。
美咲は汚れるのも気にせず、袖をまくってゴミを漁り始めた。中のゴミを一つ一つ取り出していく。
悪臭が鼻をついたが、そんなことはどうでもよかった。ただ、あの捨てられたバラの花束が見つかればそれでよかった。すぐに手はゴミで汚れてしまった。
突然、誰かに強く引っ張られた。振り返ると、九条蓮が後ろに立っていた。
彼は眉をひそめ、「何してるんだ」と鋭く言った。
美咲はゴミ箱の底まで探したが、結局花束は見つからなかった。
実は、もう花束が残っていないことは分かっていた。
あれだけ大きくて目立つ花束だったから、きっとゴミもすでに回収されてしまったのだろう。自分の花束も一緒に消えてしまった。九条蓮との関係を進めるチャンスを逃してしまった。
考えれば考えるほど悲しくなり、美咲の目には涙が浮かんだ。すっかり落ち込んだ表情だった。
沈んだ声で「あなたがくれた花を探してたの。ゴミ箱に絶対残ってると思ったのに、もうなかった。あれはあなたが初めてくれた花束だったのに……」と言った。
美咲の絶望的な言葉を聞き、九条蓮は唇をきゅっと結んだ。
この瞬間、九条蓮は高橋美咲にとって自分が贈った花がどれほど大切なものだったかを痛感した。
一日中まとっていた暗い気分が、すっかり消えていった。
九条蓮の冷たい目がどんどん優しくなっていく。彼は一歩前に出て美咲の手を取り、そっと「もう探さなくていい。花がなくなったなら、また買えばいい」と言った。
そう言って、美咲を車へ連れて戻った。
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