Chapter 242
追う者は九条社長(続き)
高橋美咲が多くを語らなくても、森川茉莉はすでに頭の中で理想像を膨らませ、最後には「もし一度でも九条社長に会えたら、きっと感激しちゃいます」とため息をついた。
高橋美咲は微笑み、森川茉莉の夢を壊さなかった。
森川茉莉の期待が大きい分、実際に会ったらがっかりするかもしれない。
終業時間になっても、九条蓮からはまだ返事がなかった。ついに我慢できず、高橋美咲は電話をかけた。
九条インターナショナルの役員会議室。
その時、九条インターナショナルの幹部たちは全員会議中だったが、空気は重苦しかった。
九条蓮は会議室の一番上座に座り、冷たい表情で鋭いオーラを放ち、誰もが恐れをなしていた。幹部たちは互いに目配せしながら、言葉を選び、細心の注意を払っていた。九条社長を怒らせるのが怖かったのだ。
なぜ今日は九条社長がこんなに怖いのか?
もう定時を過ぎているのに、解散の気配すらない。
後方に立っていた真壁直人は心の中でため息をついた。高橋美咲が九条社長からの花束を受け取らなかったせいで、九条社長は一日中この調子だったのだ。
その時、突然着信音が静寂を破った。
全員の顔に動揺が走る。誰だ、こんな日に携帯をマナーモードにし忘れた命知らずは?九条社長が不機嫌なのを知らないのか?
皆が驚いていると、九条蓮がポケットから自分の携帯を取り出した。画面をしばらく見つめ、出るかどうか迷っているようだった。
やがて、九条蓮は「会議終了」とだけ言い放った。
そう言うと、九条蓮は立ち上がり、会議室を出て行った。
高橋美咲は長い間待っても九条蓮が電話に出ず、何かあったのではと不安になり始めた。
誰か他の人に連絡しようとしたその時、電話がつながった。
「もしもし」と九条蓮の声が聞こえた。
「九、九条蓮さん、大丈夫ですか?どうしてメッセージにも返事がないし、電話にも出てくれなかったんですか?今日は忙しかったんですか?それで、今日も迎えに来てくれるんですか?」と高橋美咲は矢継ぎ早に質問した。
九条蓮の方はしばらく沈黙した。
通話が切れたのかと思ったその時、「もうすぐ着く」とだけ返ってきた。
そう言うと、九条蓮は電話を切った。
ようやく高橋美咲の張り詰めていた気持ちが少し和らいだ。何かあったのかと心配したが、ではなぜメッセージに返事をくれなかったのだろう?
でも、すぐに到着するなら、急いで下に降りなきゃ。
そう思った高橋美咲は、すぐにバッグを手に取り、九条蓮を待つために階下へ向かった。
下に降りると、すでに九条蓮の車が見えた。美咲は車に近づき、ドアを開けて乗り込んだ。
車が走り出してから、美咲はようやく九条蓮がいつも以上に無口なことに気づいた。普段から多弁な人ではないけれど、今日は本当に様子が違う。
そっと横目で九条蓮を見ると、どうも機嫌が悪そうに見えた。
もしかして……まだあのことで怒ってるの?
そんなに根に持つタイプだったっけ?
美咲は、今日一日ずっと九条蓮から返信がなくて色々考えすぎてしまったことを思い出し、ついイライラしてきた。
不満げに「昨日の夜、あのことで怒ってないって言ったよね?今日わざと私のメッセージ無視したでしょ?私、あなたからの返信ずっと待ってたんだから!」と言った。
九条蓮は眉をひそめた。
彼には美咲が何を考えているのか全く分からなかった。彼にとって、美咲が贈り物を受け取らなかったのは自分自身を拒絶されたのと同じことだったのに、何事もなかったかのように振る舞い、さらにどうして返信しなかったのかと問い詰めてくる。
それこそ美咲が望んでいたことじゃないのか?
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