Chapter 241
追う者は九条社長
高橋美咲の顔に驚きの色が浮かんだ。
柳小路の相手が九条社長だったなんて?
その噂話には本当に驚かされた。まさか九条社長が柳小路のような女性に目をつけるなんて、信じられないくらいもったいない気がした。
もし将来、柳小路が九条家に嫁ぐようなことになったら、九条凛の性格からして、二人は絶対に水と油の関係になるだろう。
九条凛には、柳小路のような女性には気をつけるように伝えておかないといけない。
でも、昨夜は九条社長が失恋したって話じゃなかった?
それなのに、どうして今は柳小路の相手になっているの?もしかして、口説き落とせなくて失恋したってこと?
森川茉莉も高橋美咲を見て驚いた様子だった。仲間を見つけたような気分で、すぐに「高橋取締役も驚きますよね?でも、これはみんなの憶測なんです。本人たちも本気で信じてるわけじゃないみたいです」と話しかけてきた。
高橋美咲も同意してうなずいた。「本当に驚きすぎて、信じられないわ。」
「でも九条社長ってすごくミステリアスじゃないですか。あんな大金持ちに取り入れたら、九条インターナショナルの中で好きなポジションも手に入れられるし、まるで…」
言いかけて森川茉莉はハッと口をつぐみ、慌てて自分の口を押さえた。
「高橋取締役、そんなつもりじゃなかったんです」と焦って弁解した。
高橋美咲は目を細めた。「つまり、私がコネで入ったってこと?」
「みんなそう言ってて…」と森川茉莉は小さな声で答えた。
高橋美咲は怒ることなく、むしろ自信ありげに口元をほころばせて言った。「確かにコネで入ったけど、実力がないわけじゃない。これからちゃんと証明して、みんなの見方を変えてみせるわ。」
高橋美咲が怒らなかったので、森川茉莉はほっと息をついた。
やっぱり見込んだ通りの人だった。
高橋美咲は性格も良くて、とても接しやすい。これからはこの人のそばにいた方が、他の誰よりもきっといいに違いない。
森川茉莉の前の上司はすぐに機嫌を損ねて、些細なことで八つ当たりしてきた。だから高橋美咲のような人に出会えて、本当に運が良かったと思った。
「柳小路の話、どこで聞いたの?」
「今日みんなが彼女の周りに集まって聞いてて、本人がそう言ったんです。それでみんなで推測して。とにかく柳小路は、今その相手と付き合ってるって言ってたし、もう少ししたら真相が分かるって!」
高橋美咲はうなずき、何かを思い出したように注意を促した。「本当かどうかはともかく、少し気をつけておいた方がいいわ。」
「もし柳小路が本当に九条社長と何かあるなら、これからは彼女に気をつけて。下手に逆らうと、面倒なことになるから。」
森川茉莉はすぐに「分かりました、高橋取締役」と答えた。
森川茉莉は、高橋美咲も上層部のコネを使ったのかもしれないと思ったが、その相手は九条社長ほどの力はないはず。柳小路にはやっぱり逆らわない方がいい。
ふいに森川茉莉が興味津々に尋ねた。「あ、そうだ高橋取締役、九条社長って見たことありますか?どんな人なんですか?」
前回の九条悠真の婚約パーティーのような場は、森川茉莉の立場では出席できないし、九条蓮の情報も九条悠真が金を使って徹底的に隠したので、全く漏れていなかった。
森川茉莉は九条蓮にとても興味があり、高橋美咲に質問した。
高橋美咲は逆に聞き返した。「見たことないの?」
「ないんです。」森川茉莉は首を振り、ため息をついた。「もう2年も会社にいるのに、九条社長を一度も見たことがありません。九条社長は私たちの心の中で、ずっと謎の存在なんです。」
高橋美咲は、九条社長は九条蓮ほどの美形ではないと思っていたが、外部の人間の前で本当のことは言えない。
軽く咳払いをして、褒め言葉を必死に探した。「九条社長は…そうね、端正で品格があって、堂々としていて、特に誠実な方よ!」
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