Chapter 231
九条凛のお兄ちゃんが振られた(続き)
じゃあ、兄さんが妻に逃げられたみたいな顔で帰ってきて、やけ酒してたのは何だったの?本当に美咲さんを義姉に失ったと思ってたのに!
一瞬で九条凛は元気を取り戻した。
その時、九条蓮は前に出て高橋美咲に言った。「運転できる?」
「できるよ。」
九条蓮は車の鍵を高橋美咲に渡した。
自分は飲酒しているので運転できないからだ。
九条蓮の車が九条家本邸を離れても、九条凛はまだ夢を見ているような気分だった。
今夜は本当に波乱万丈だった。死ぬほど怖かったけど、結局は取り越し苦労だった。
……
車は静かに道路を進んでいく。九条蓮は助手席に座り、頭をヘッドレストに預けて、どこかしんどそうにしていた。
高橋美咲は「酔ってるの?」と尋ねた。
九条蓮は本当は平気だったが、高橋美咲の心配そうな声を聞くと、なぜか安心してしまい、無意識に否定しなかった。
高橋美咲は、九条蓮が本当にしんどくて話す気力もないのだと思った。
「もうすぐ家に着くから。あとで酔い覚ましのスープ作るね。」
そう言って、高橋美咲はアクセルを少し踏み込んだ。
ほどなくして、二人は代官山パークレジデンスに戻った。
部屋に入ると、高橋美咲はキッチンに入り、酔い覚ましのスープ作りを始めた。
九条蓮はソファに座り、キッチンで忙しく動く高橋美咲の姿を見つめながら、ふと困惑した表情を浮かべた。
高橋美咲は相沢翔に夢中なはずじゃなかったのか?それなのに、どうして自分のことをこんなに気遣ってくれるんだ?
こんなふうに優しくされると、ますます諦めきれなくなるのに。
やがて、高橋美咲は丁寧に酔い覚ましのスープを運んできた。
九条蓮はすぐにまた目を半分閉じ、酔ったふりをした。
そんな彼の様子を見て、高橋美咲はアシスタントの仕事って本当に大変だなと思った——真夜中にこんなになるまでお酒を飲まなきゃいけないなんて。
胃にも体にも悪いに決まってる!
心配そうな目で「大丈夫?」と声をかけた。
九条蓮はゆっくりと目を開け、その深い視線で高橋美咲を見つめた。
彼女は艶やかな黒髪を耳にかけていて、白くて可愛らしい顔があらわになり、澄んだ瞳にははっきりとした心配の色が浮かんでいた。
九条蓮はしばらく黙って彼女を見つめ、低い声で「うん、大丈夫」と答えた。
「じゃあ、これ。二日酔いに効くスープだから、少しは楽になるかも」
高橋美咲はお椀を彼の前に差し出した。
九条蓮は何も言わず、深くて読めない目をしていた。
しばらくして、ようやく彼女の手からスープを飲んだ。
すぐにスープは飲み干され、高橋美咲が椀をテーブルに置いたその時、不意に誰かに強く抱きしめられた。
九条蓮の香りに包まれ、彼女は全身が固まってしまい、どういう意味なのか分からなかった。
「き、九条蓮?」
「動かないで。少しだけ、こうしていさせて」
高橋美咲はもう動くことができなかった。その瞬間、九条蓮が何を考えているのか頭の中は疑問だらけだった。
お酒のせいで甘えたくなってるの?
それとも、ただ抱きしめたかっただけ?
いや、そんなはずない。きっと酔ってるから、私を抱き枕代わりにしてるだけだ。
そう、絶対そうに違いない!
九条蓮は顔を彼女の首筋に埋め、片腕でそっと腰を抱き、まるで離したくないような様子だった。
高橋美咲は心臓が急にドキドキし始めた。
頭はもう真っ白で、ただおとなしく抱きしめられるしかなかった。
しばらくして、高橋美咲の耳元で九条蓮の声が聞こえた。「契約、解消しよう。君を自由にする」
高橋美咲は固まった。まさか九条蓮がそんなことを言うなんて思ってもみなかった。一体どういう意味?
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