Chapter 228
デザインディレクターになる秘密
高橋美咲の心の中では、自分は相沢翔には到底及ばないのかもしれない。
長身をソファに預け、顔は暗く、全身から重苦しい空気が漂っていた。
実際、力ずくで奪うことだってできる。相沢翔から彼女を奪うのは難しくない。だが、欲しいのは自分の意志で来てくれる女性だ。
そう考え直すと、高橋美咲と相沢翔の間の揉め事はむしろ自分にとってチャンスだった。
簡単に諦めるような男じゃない。
心の中の感情を整理し終えると、九条蓮はドアを開けて外に出た。
リビングに高橋美咲の姿はなく、寝室からかすかに電話をしているような声が聞こえた。
歩み寄ろうとしたその時、寝室から高橋美咲の声が聞こえてきた——
「翔、今度は新しいのをあげるから、その時はもう断らないでね」
九条蓮の体がピタリと止まり、足も止めた。そのまま進むのをやめた。
高橋美咲の声ははっきりしていた。電話の相手は相沢翔だ。
「ふっ…」九条蓮は自嘲気味に笑った。
何を期待していたんだ。
高橋美咲は相沢翔に何かを渡し、相沢翔が気に入らなかったから、ただ自分に適当に回しただけ。それ以上の意味なんてない。怒る権利なんて自分にはない。
深く息をつき、九条蓮は部屋を出て行った。
その時、電話中の高橋美咲はドアが閉まる音を聞き、不思議そうに外を見て「九条蓮、出かけたのかな?」とつぶやいた。
電話の向こうの相沢翔に「じゃあ決まりね。今度またあの宝石をデザインにして叔母さんに渡すから、あなたから渡してあげて」と言った。
「わかった」
相沢翔は少し間を置いてから「美咲、さっき九条蓮にサプライズをあげたのに、全然喜ばずに怒ってたって言ってたよね。理由、たぶん俺わかるよ」と言った。
「どうして?」
相沢翔は自信たっぷりに「きっと、あげたものが高価じゃなかったからだよ!」
「え?」高橋美咲はきょとんとした顔で「でもあのメンズブランドの服、一着でも安くないよ。給料の半分以上かかったんだから」と言った。
相沢翔は軽く咳払いし「九条蓮の立場を考えてみなよ。あの人、いいものなんていくらでも見てるでしょ?君があげたくらいの物じゃ、何とも思わないよ」と言った。
それを聞いて、高橋美咲はようやく納得した。
九条蓮はただの専属運転手兼アシスタントとはいえ、日々いろんなものに触れているから、きっと目も肥えているのだろう。
そうか、あげたメンズ服が価値不足だったから、九条蓮は見向きもしなかったのか。まさかこんな形で作戦失敗になるとは。残念!
九条蓮はそのまま九条家の一戸建てに戻った。
ちょうどその時、九条凛はソファに寝転がってドラマを見ていた。九条蓮が帰ってきたのを見ると、怪訝そうな顔をした。「兄さん、代官山パークレジデンスにいたんじゃなかったの?なんで急に帰ってきたの?」
実は、最初に頭に浮かんだのは、兄が高橋美咲とケンカしたのではないかということだった。
思い返せば、高橋美咲は以前、相沢翔をどうやって落とすか相談してきたことがあった。だから、これは十分あり得る話だった。
九条凛はすぐに起き上がり、九条蓮の隣にすり寄って、「兄さん、高橋美咲とケンカしたの?相沢翔のことで?」と尋ねた。
「してない。」九条蓮は無表情で答えた。
本当にケンカはしていなかった。
ただ、高橋美咲が他の男にいらないと言われたものを自分に渡してきた、それが腹立たしかっただけだ。
九条蓮はそれ以上何も言わず、そのまま二階へ上がっていったが、九条凛は心配で慌てて後を追った。
九条蓮がワインルームに入り、強い酒を開けてカウンターに座り、次々とグラスを傾けているのを見た。
九条凛は目を細めた。
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