Chapter 226
洋服が届いた
昨日、美咲が桜井奈緒と九条悠真に遭遇し、あれこれ言われた後、二人は一方的に和解したつもりでいるらしい。何事もなかったかのように挨拶できるなんて、よほど図太い神経だ。
美咲は特に相手にせず、愛想も良くしなかったが、冷たくもしすぎず、あくまで仕事上の態度を保った。
前回の偽妊娠騒動は桜井奈緒に大きなダメージを与えていた。
九条悠真が雇ったサクラがネットで火消しをし、「誤解だった」と弁明したものの、言い訳は苦しく、ネット民も誰も信じていなかった。
さらに美咲は、自分の高橋美咲壁画スタジオに押しかけてきた人々が桜井奈緒の雇ったサクラだったことも突き止め、すでに全員排除していた。
今ではまた注文が入り始め、戸建て住宅の壁画依頼が舞い込んでいる。
だが、メゾン・ヴェルヌ・ジュエリーのデザイナーになった今、壁画の仕事を続けるつもりはなかった。そこで、しばらくスタジオを休業する旨を告知し、今後機会があれば再開すると発表した。
意外だったのは、この一件で美咲のフォロワーが増え、その多くが桜井奈緒の元から流れてきたようだったことだ。
美咲は自分のデスクに腰を下ろした。
どこかからじっとした陰気な視線を感じ、不快の元を探して目を向けた。
それは柳小路だった。
柳小路は美咲に見られても全く気にせず、むき出しの嫉妬心を隠そうともしなかった。
美咲は冷笑し、気にも留めなかった。
本当にここは敵だらけだと改めて思う。桜井奈緒と九条悠真という二人の厄介者だけでなく、柳小路という小物にも警戒しなければならない。
だが、もう昔のような世間知らずの美咲ではない。
そう簡単にはやられない!
昼休み、美咲の携帯が鳴った。洋服店から「商品をお届けしました」との連絡だった。
嬉しくなって、彼女は階下へ受け取りに行った。
下の洋服店のスタッフが、丁寧に包装された袋を美咲に手渡し、礼儀正しく言った。「お客様、ご購入いただいたお洋服です。」
「はい、ありがとうございます。お手数おかけしました。」
美咲は手元の袋をちらりと見た。ブランド側も贈り物だと察したのか、ギフト用の箱に入れてくれていた。とても特別感があり、使ったお金も十分価値があると感じた。
戻ろうとしたその時、携帯が鳴った。
相沢翔からだった。
「もしもし、翔?どうしたの?」
相沢翔は「美咲、今九条インターナショナルにいる?母さんに頼まれて、君に渡すものがあるんだ。もうすぐ会社の下に着くよ。」と言った。
美咲は「ちょうど下にいるから、少し待ってるね。」と答えた。
相沢翔の母、相沢夫人は美咲の義理の叔母にあたる。高橋恵(美咲の母)に何かあってから、ずっと美咲を支え、実の母親のように親身になってくれていた。
美咲も相沢夫人にはとても感謝しており、何か預かり物があると聞いて断る理由はなかった。
ほどなくして、相沢翔の車が九条インターナショナルのビルの前に到着した。
美咲が近づくと、相沢翔は車から降りてきて、可愛らしい小箱を手渡した。
美咲は受け取りながら、不思議そうに箱を開けた。
箱の中には、指三本分ほどの大きさの原石が入っていた。
日差しが箱を照らし、宝石は透き通って輝き、まばゆいほど美しかった。
相沢翔は「母さんが数日前のオークションで見つけて、美咲に似合いそうだって競り落としたんだ。」と言った。
こんな高価なもの、簡単に受け取れるはずがない。
美咲は箱の蓋を閉じて相沢翔に返し、「だめ、これは高すぎるよ。受け取れないから持って帰って。」と言った。
「そんな他人行儀なこと言うなよ。大したものじゃないし、母さんに渡さなかったら俺が怒られる。いいから受け取って!」
「本当に無理だよ。」
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