Chapter 224
敵同士の世界は狭い(続き)
……
高橋美咲は九条蓮の手を引き、ショッピングモールの隅にある別のレストランへ向かった。そこはあまり混んでおらず、すぐに席に案内された。
席に着いて間もなく、料理が次々と運ばれてきた。
せっかく食欲を削ぐ相手に会ったのに、高橋美咲は全く気にせず、むしろ美味しそうにパクパクと食べ始めた。一方の九条蓮は、他人の服掛けにされたせいか、食欲がなさそうだった。
高橋美咲は九条蓮の様子を見て、あまり食べていないことに気づいた。
「どうしたの?あんまり食べてないけど、口に合わない?」と不思議そうに尋ねた。
「いや。」
高橋美咲はため息をつき、「まあ、私もそんなに美味しいとは思わないけどね。相沢翔が美味しいって言ってたチェーンの焼き魚屋だったら、きっと違ったよね」と言った。
口元に笑みを浮かべて「でも大丈夫。また今度時間がある時に行こう」と続けた。
九条蓮は箸を持つ手を止め、一層食欲がなくなった。
相沢翔が美味しいと言い、高橋美咲も行きたがっている。
しかも自分も連れて行きたいらしい。
さっきの服選びの件も重なり、九条蓮の胸には言いようのない苛立ちが湧き上がった。「あの焼き魚屋は美味しくない」と冷たく言い放った。
高橋美咲は特に気にする様子もなく、むしろ不思議そうに「え?そんなことないでしょ?口コミも良かったし。本当に美味しくないの?」と首をかしげた。
九条蓮は無表情で「サクラの口コミだ」と言った。
「えっ?飲食店でもそんなことするの?」
その言葉を聞いて、高橋美咲の焼き魚への興味はすっかり薄れた。
彼女は箸で料理を取り、九条蓮の器に入れながら「じゃあ、もう焼き魚のことは忘れる。早く食べよ」と笑顔で言った。
九条蓮はちらりと器を見て、高橋美咲が肉ばかり入れてくれたことに気づいた。
溜まっていた苛立ちが少し和らいだ。
食事を終えると、高橋美咲がさっと会計を済ませ、二人は車で代官山パークレジデンスへ戻った。
車の中で、高橋美咲はスマホを取り出し、相沢翔にメッセージを送った。
さっきうまくごまかして、九条蓮には服を買っていることがバレなかったこと、明日こっそり渡してびっくりさせるつもりだと伝えた。
そのメッセージを見て、相沢翔はスマホを握りしめて思わずニヤニヤと笑った。高橋美咲は本当に素直で、ちょっと言えばすぐ理解してくれる!
これでますますお金持ちの義理の従姉を後ろ盾にできそうな気がしてきた。
その後、相沢翔は高橋美咲を賢いと褒め、早く幸せをつかめるようにとエールを送った。
高橋美咲がメッセージを受け取ると、口元がふっとほころんだ。
もちろん彼女は鈍感ではない。今日の九条蓮の落胆には気づいていた。
サプライズを本当に驚かせるためには、気づかないふりをするしかなかった。きっと九条蓮が服が自分へのものだと知ったら、とても喜ぶだろう。
本当に九条蓮のために、いろいろと手間をかけてサプライズを用意したのだ。
高橋美咲は、明日九条蓮がプレゼントを受け取ったときの表情を想像し始めていた。喜ぶのか、驚くのか、それとも別の顔を見せるのか……。
九条蓮は高橋美咲のすぐ隣に座っていた。運転中だったが、彼女の一挙一動はしっかり見えていた。
彼女はスマホを手に誰かとメッセージをやり取りし、顔には春のような笑みが広がっていた。
相手は相沢翔なのか?
我慢していたが、結局どうしても聞かずにはいられなかった。「相沢翔とやり取りしてるのか?」
「うん、なんで分かったの?」高橋美咲は九条蓮を疑わしげに見つめ、さっきメッセージを覗かれていたのではと少し不安になった。
それなら、せっかくの計画がバレてしまう。
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