Chapter 220
今夜、空いてる?(続き)
九条蓮は服を持って試着室に入った。
高橋美咲は外の椅子で待っていた。
その時、スマホが鳴った。相沢翔からの電話だった。
何の用だろう?
高橋美咲は画面をスワイプして電話に出た。「翔くん?」
電話の向こうからは、相沢翔の興奮気味で好奇心いっぱいの声が聞こえてきた。「美咲、昨日“九条蓮を落とす”って言ってたけど、進展は?お兄ちゃんがコツを教えてやろうか?」
それを聞いた高橋美咲は、少し困ったようにため息をついた。
「まだ始めたばかりだから、どうなるか分からないよ。今は一緒に買い物中。親友に“サプライズを用意してプレゼントを渡すといい”って言われたから、今ちょうど服を贈ろうと思ってるの。」
高橋美咲は隠すことなく、今考えていることを相沢翔に話した。
話を聞き終えた相沢翔は、すぐに「それじゃダメだ!」と言った。
「なんで?」高橋美咲は不思議そうに尋ねた。
相沢翔が言った。「まさか、ストレートにプレゼント買うって本人に言ったんじゃないだろうな?」
「えっと……そこまではしてないけど。」高橋美咲は少し自信なさげに、「でも、服を試着してもらったの。たぶん、私が買うって気づいてるよね?」
相沢翔は苛立った様子で言った。「高橋美咲、お前の首の上の脳みそは飾りか?男の落とし方も知らないのかよ!」
その言葉に高橋美咲は少し不機嫌になった。
どういう意味?バカにしてるの?
これが初めての恋の駆け引きなんだから、経験なんてあるわけないじゃん!
高橋美咲は鼻で笑った。「もういい。どうせ私には脳みそないから、あなたの大事な目をこれ以上汚さないように切るわ。」
「待てって!」相沢翔の声が少し優しくなり、「はぁ……お前のことが心配なんだよ。もちろん、直接プレゼント渡すのはダメだ。」
「直接渡しちゃダメって、どういうこと?」
相沢翔は根気よく説明を始めた。自信満々に、「もう相手に知らせちゃったら、それはサプライズじゃないだろ?サプライズってのは、相手が事前に知らないからこそ印象に残るんだ。そうじゃなきゃ、驚きも感動もない!」
相沢翔の経験談を聞きながら、高橋美咲は少し呆然とした顔になった。確かに、さっきはそこまで考えてなかったかも。
「本当に?」
「当たり前だろ!」相沢翔は自信たっぷりに言った。「俺は男だ。男の気持ちは男が一番わかる。前に夏目詩織が俺にサプライズしてくれた時も、めちゃくちゃ印象に残ったからな!」
相沢翔の婚約者・夏目詩織も同じことをしたと聞いて、高橋美咲はもう迷わなくなった。
その後、相沢翔は高橋美咲と少し雑談してから、気を利かせて電話を切った。
九条蓮はまだ試着室から出てこない。高橋美咲はさっき相沢翔が言ったことを思い返した。サプライズを先にバラしてしまったし、九条蓮にももうバレてる。これじゃもう取り返しがつかないかも……。
だが、突然高橋美咲の目が輝いた。いや、まだ方法はあるかもしれない——思いついた!
しばらくして、九条蓮が試着室から出てきた。
物音がして、高橋美咲が顔を上げると、次の瞬間、すらりとした長身の姿が視界に入った。
彼女が選んだのは、シンプルな白いドレスシャツと黒のスラックス。九条蓮が普段着ているものと大差ない、素材やシルエットが少し違うだけ。
まさか、九条蓮がそれを着た途端、雰囲気が一変して、まるで手の届かない存在のようなオーラを放つとは思わなかった。
襟元のボタンが全部留められていないせいで、少しだけラフな印象も加わっている。
高橋美咲は今まで色々な男性を見てきたが、簡単に心を奪われるタイプではない。だが、目の前の九条蓮だけは、どうしても目が離せなかった。
格好良すぎる!
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