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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 219 - 今夜、空いてる?

Chapter 219

今夜、空いてる?

「やり残したことなんて……」と真壁は言いかけて、ふと動きを止めた。そして額をパチンと叩き、「あった!」と叫んだ。

「何だよ?」と水城が驚いて尋ねる。

「高橋さんの壁画、前に完成したのに、会社がまだ最終支払いを済ませてなかったんだ。経理部に催促しないと……」

そう言いながら、真壁はパソコンを立ち上げ、会社の経理部に連絡を取った。

10分後、高橋美咲の口座に九条インターナショナルからの振込があった。最初は何のことか一瞬戸惑ったが、すぐに壁画の残金だと思い出した。

支払いを受け取った高橋美咲の気分は一気に明るくなった。

ふと何かを思い出したように、すぐにスマホを取り出し、九条蓮にメッセージを送った。「今夜、時間ある?」

高橋美咲は、以前九条凛に相談した時に教えてもらった“ちょっとしたテクニック”を思い出したのだった。

九条凛は「男も女も本質は同じ。男が女を追いかける時は色々プレゼントして、女は嬉しいでしょ?男だって同じだよ」と言っていた。

高橋美咲は前から九条蓮に服を何着か買ってあげたいと思っていたが、ちょうど壁画の支払いも入ったし、今が絶好のチャンスだと考えた。

ただ、いくら長く一緒にいてサイズは分かっていても、実際に似合うかどうかは分からない。やっぱり本人に試着してもらうのが一番だ。

ついでにデートもできるし……。

高橋美咲の頬がほんのり赤く染まった。実は一番の目的はそっちだった。

その頃、オフィスで九条蓮はスマホを見つめ、眉をひそめていた。

高橋美咲がわざわざ「今夜空いてる?」と聞いてきた意味が分からず、これまでの出来事を思い返して、つい色々と考え込んでしまう。

しばらく沈黙した後、九条蓮は結局流れに任せて返信した。「どうした?」

高橋美咲:「仕事終わったら、一緒に行きたいところがあるんだけど、いい?」

九条蓮の眉はさらに深く寄った。

だが、結局は何があっても受けて立つ覚悟で、高橋美咲がどこに連れて行こうとしているのか確かめることにした。

仕事が終わると、高橋美咲は嬉しそうに荷物をまとめた。

九条インターナショナルのエントランスに、九条蓮の車がぴったりのタイミングで到着した。高橋美咲は、彼が「10分後」「5分後」と言えば本当にその通りに現れることに、改めて感心した。彼の時間の正確さは驚くほどだ。

車に乗り込むと、高橋美咲はナビに表示させておいた住所を九条蓮に見せた。

九条蓮がちらりと見ると、それは東京中心部にある大型チェーンのショッピングモールで、しかも九条ホールディングスの所有する施設だった。

九条蓮は何も聞かず、そのまま車を走らせた。

モールに到着すると、高橋美咲は九条蓮の手を引いてまっすぐメンズ服売り場へ向かった。九条蓮はゆったりとした足取りで後ろからついていく。

高橋美咲は、自分が手の届く範囲で質も良いメンズウェアの店を選び、店内を見て回った後、何着か服を手に取って九条蓮に合わせてみた。

しばらくして満足そうにそれらを九条蓮の腕に押し込み、「この辺りでいいと思う。試着してみて」と言った。

九条蓮は腕に抱えた服と、高橋美咲の期待に満ちた瞳を交互に見て、口元をわずかに緩めた。

高橋美咲が自分に服を買ってくれるのか?

急に気分が少し浮き立った。高橋美咲が自分のために服を買ってくれるということは、きっと自分のことを大切に思ってくれている証拠だし、このブランドも安くはない。

二人の間には契約関係があるため、九条蓮はこれまで給料のカードを高橋美咲に渡したことがなかった。

だからこそ、彼女がこれだけ高価な服を贈ってくれるのは、まさに自分の全てを差し出してくれているようなものだ。