Chapter 217
高橋美咲と柳小路は知り合いだった
翌朝、高橋美咲は眠そうにベッドから体を引きずり起こした。
昨夜はなかなか寝付けず、何度も寝返りを打った。うとうとしたまま眠りに落ちたので、九条蓮が帰ってきたのかどうかも分からなかった。
隣のスペースに目をやると、シーツにわずかなシワが残っていた。九条蓮がここで寝た証拠だ。
今朝は早く起きたのだろうか。
身支度を整えた高橋美咲が部屋を出ると、リビングの椅子に座る九条蓮の姿が目に入った。
彼は白いシャツに黒のスラックスというシンプルな服装のまま。白と黒のコントラストが際立ち、全身から近寄りがたい冷たい雰囲気を放っていた。
なぜか高橋美咲は、彼の機嫌がどこかおかしいような気がしてならなかった。
もしかして、早起きしすぎて不機嫌なのだろうか。
高橋美咲はおずおずと声をかけた。「お、おはよう……」
九条蓮が目を上げて高橋美咲を見た。その時、彼の目の下にうっすらとクマができているのに気づき、ひどく疲れているように見えた。
まるで昨夜、よく眠れなかったかのようだ。
高橋美咲は考えを振り払い、九条蓮の隣の椅子に腰を下ろした。
その時、テーブルの上にいくつも繊細な朝食が並んでいるのに気づいた。栄養バランスも良さそうで、外で買ってきたもののようだ。
九条蓮はわざわざ早起きして朝食を買いに行ってくれたのだろうか。
もしかして、自分のことを心配して、無理をさせたくなかったのかもしれない。
その瞬間、高橋美咲の胸がじんわりと温かくなった。彼の端正で疲れた顔を見つめ、ますます胸が痛んだ。
……
メゾン・ヴェルヌのマネージャー室では、桜井奈緒が険しい表情で椅子に座っていた。
今や高橋美咲の顔を見るだけで、怒りで胸が苦しくなる。
本来、九条インターナショナルから来るはずだったデザインディレクターのために用意したものを、すべて高橋美咲が享受している。高橋美咲にそんな資格があるのか?!
陽子は端に立ち、息をひそめて桜井奈緒を刺激しないようにしていた。
しばらくして、陽子が恐る恐る口を開いた。「桜井部長、高橋美咲さんと柳小路って、もともと知り合いだったみたいです……」
桜井奈緒は陽子を見た。「高橋グループの人間が高橋美咲と知り合い?聞き間違いじゃないの?」
「そういう話をしているのを聞いただけで、実際のところはよく分かりません。高橋美咲さんが柳小路さんと話しているのを見た人がいるみたいです。」
その言葉を聞いて、桜井奈緒の目に鋭い光が走った。
昨日の柳小路の様子からして、高橋美咲と特別親しいようには見えなかった。もし何か因縁があるなら、それを利用できれば自分の手を汚さずに済む。まさに一石二鳥だ。
「すぐ調べてきて。」
陽子はすぐに部屋を出て、柳小路にうまく取り入って高橋美咲のことを聞き出し、すぐに戻ってきた。
桜井奈緒が言った。「高橋美咲は以前、高橋グループで働いていたけど、何かが原因でクビになったの?」
陽子はすぐにうなずいた。「はい。ただ、詳しいことは柳小路さんも教えてくれませんでした。少し警戒しているみたいです。」
当時、高橋正人がこの件を外部に漏らさないよう指示していた。
柳小路は九条インターナショナルに来たとはいえ、元は高橋グループの人間。高橋美咲を目の前で抑えつけることはできても、その件について多くを語る勇気はなかった。
桜井奈緒の目が動いた。「何があったのか、早く突き止めて!」
「分かりました。」陽子は再び部屋を出ていった。
桜井奈緒は冷たい笑みを浮かべた。
まさか高橋美咲にそんな過去があったとは。自分には一言も話していなかった。弱みを握った以上、文句は言わせない。高橋美咲なんて、本当に腹立たしい!
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