Chapter 211
まさかの「出て行け」宣言(続き)
その言葉を聞いて、柳小路の張り詰めた表情が少し緩んだ。
高橋グループにいた頃から、高橋美咲のことが何かと気に入らなかった。将来有望なのが見えていたし、だんだん自分を追い越しそうな気配も感じていた。
高橋美咲が高橋グループを辞めて、ようやく自分も伸び伸びと成長できるようになった。
もし今、高橋美咲が九条インターナショナルに入ったら、また自分が霞んでしまうのではないか。
幸い、高橋美咲はメゾン・ヴェルヌの責任者である桜井奈緒と仲が悪いから、その心配はなさそうだ。
高橋美咲は口元に薄い笑みを浮かべ、軽く「ごめんなさい、面接じゃなくて、今日から出社なの」と言った。
「出社?」桜井奈緒は疑わしげに彼女を見た。
「そうよ。」
高橋美咲はこれ以上説明する気もなく、バッグから社員証を取り出し、個人情報が見えるように表を向けて置いた。
そして唇を上げて「メゾン・ヴェルヌのデザインディレクター」と告げた。
その言葉が落ちるや否や、会議室にどよめきが広がった。
みんな目を見開き、高橋美咲を信じられないものを見るように凝視した。
高橋美咲がメゾン・ヴェルヌのデザインディレクター?
本当なのか?見間違いじゃないのか?
桜井奈緒はあまりの衝撃に立ち上がり、高橋美咲を睨みつけて「高橋美咲、その社員証どこで手に入れたの!?まさか盗んだんじゃないでしょうね!」と歯ぎしりしながら言った。
桜井奈緒の言葉を聞いて、高橋美咲は冷たく笑った。
高橋美咲は腕を組み、何気なく言った。「人を泥棒呼ばわりするのは、泥棒だけよ。私は九条インターナショナルの正式な採用手続きを経て、ここで働いてるの。」
そんなはずがない!
桜井奈緒の顔色がさっと曇った。高橋美咲が九条インターナショナルに正規ルートで入ったなんて信じられない。九条インターナショナルの採用基準がどれほど高いか、彼女はよく知っている。自分ですら高橋家のコネを使ってようやく入れたのに、高橋美咲にそんな資格があるはずがない。
九条悠真の暗い視線が高橋美咲に向けられ、複雑な表情を浮かべていた。
彼は高橋美咲がどうやって入社したのか知っている。神谷海斗に取り入ったのだ。
あの日、自分が差し向けた男が、神谷海斗と高橋美咲が代官山パークレジデンスに続けて入っていくのを見ていた。その時は二人の関係を疑いながらも、深く考えなかった。
だが今、その疑念が再び頭をもたげ、しかもどんどん強くなっていく。
高橋美咲を九条インターナショナルに入れ、しかもデザインディレクターにしたのは、やはり神谷海斗に違いない。どうりで高橋美咲があんなに得意げなわけだ。
高橋美咲の家柄は大したことないが、顔立ちもスタイルもほぼ完璧。あの日の衝撃的な美しさは今も忘れられない。神谷海斗が目をつけるのも無理はない。
自分があの時、彼女を手に入れられなかったことが最大の後悔で、だからこそ今も忘れられないのだ。
九条悠真は思わず眉をひそめ、ますます納得できない気持ちが強くなった。
桜井奈緒はもともと高橋美咲のスタジオを徹底的に潰したことで、彼女が行き場を失い、みじめな姿になると踏んでいた。
まさか、ほんの一瞬でまた目の前に現れるなんて思いもしなかった。
しかも、メゾン・ヴェルヌ・ジュエリーのデザインディレクターにまでなっているなんて!
このまま高橋美咲が自分の目の前で好き勝手に振る舞うのを、絶対に許せない。しかも高橋美咲はまだ九条悠真を諦めていない——もし彼を誘惑して奪われたらどうするの?
桜井奈緒は歯ぎしりしながら、暗い顔で言い放った。「どんな手を使って入ったか知らないけど、今すぐ出て行って。メゾン・ヴェルヌ・ジュエリーにあなたの居場所はないわ!」
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