Chapter 209
デザイナーたちの出社報告
今回、九条インターナショナルが立ち上げるジュエリーブランドは「メゾン・ヴェルヌ・ジュエリー」。初期段階では加工や生産などは高橋グループが担当し、九条インターナショナルは貿易販売、アフターサービス、デザインなどを担っていた。
桜井奈緒と九条悠真は、どちらもこのブランドのマネージャーだった。
2人はそれぞれ別のオフィスを持ち、九条悠真はマーケティング・営業マネージャー、桜井奈緒はブランド内のあらゆる業務を担当していた。
そのほか、メゾン・ヴェルヌ・ジュエリーの物流やマーケティング、営業などの部門はすでに整っており、あとはプロのデザイナーだけが不足していた。
会議室で、桜井奈緒と九条悠真は5人のデザイナーと顔を合わせた。
4人は世界的に有名なデザイナーで、1人だけが高橋グループからメゾン・ヴェルヌ・ジュエリーのサポートのために派遣された柳小路だった。
他のデザイナーたちは柳小路が高橋グループのデザイナーだと知ると、皆とても丁寧に接したため、彼女の表情はますます冷たくなった。
その時、1人が不思議そうに尋ねた。「桜井マネージャー、デザインディレクターもいるはずですが、まだお会いしていませんよね?」
それを聞き、桜井奈緒は手首の時計をちらりと見た。
まだ報告時間まで5分残っているので、遅刻にはならない。
桜井奈緒は微笑み、「デザインディレクターになれる人は、どこを取っても優秀なはず。ちょっとくらい遅れて華々しく登場したいというプライドがあっても普通よ」と言った。
「桜井マネージャー、私たちのデザインディレクターってどんな方なんですか?業界で有名な方ですか?」
「そうですよ、何も情報が出ていなくて。誰が私たちを率いるのか、すごく気になります。」
桜井奈緒は困ったように微笑み、「今回のデザインディレクターは九条インターナショナルの別の方がアレンジしたので、私も誰なのか知らないんです。でも、もうすぐ分かりますよ」と答えた。
デザインディレクターがあまりにも謎めいているため、皆の好奇心はますます高まった。
柳小路は目を細め、さっき下で出くわした高橋美咲のことをふと思い出した。まさか彼女がメゾン・ヴェルヌ・ジュエリーのデザインディレクターなのでは?
ありえない!
高橋美咲の評判では、業界で彼女を欲しがる人などいるはずがない。さっき入口で、高橋美咲がカードを持っていなくて中に入れず困っているのも見た。
どうせこっそり入り込んで一儲けしようとしたのに、止められただけだろう。
九条悠真はスマホをポケットにしまい、「デザイナーの皆さん、真壁アシスタントに連絡しました。デザインディレクターは渋滞で遅れているかもしれないそうなので、もう少しお待ちください」と言った。
皆すぐに笑って「少しくらい待つのは大丈夫」と口々に言った。
確かに、今回のデザインディレクターは皆の期待を大いに煽っていた。人々は小声でひそひそと話し始める。
皆がざわめく中、会議室のドアが開いた。
高橋美咲が突然みんなの前に現れると、会議室の視線が一斉に彼女に集まった。
一瞬で会議室は静まり返った。
桜井奈緒は完全に呆然とし、高橋美咲がどうやってここに来たのか理解できなかった。
どうやって入ってきたの?
桜井奈緒の顔色は最悪だった。眉をひそめて「高橋美咲!誰が九条インターナショナルに入っていいって言ったの?今すぐ出て行きなさい!」と怒鳴った。
高橋美咲は桜井奈緒の言葉をまるで聞いていないかのようだった。
来る前から心の準備はできていた。桜井奈緒が自分に良い態度を取るはずがないことは分かっていた。
彼女はまっすぐ歩いてきて、桜井奈緒の隣の席にどっかと腰を下ろし、にっこり笑って「出て行き方が分からないから、まずお手本を見せてくれない?」と言った。
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